内容説明
「天皇親政」と「国体」へのタブーが解けた戦後の学界で、いち早く天皇統治の解明に挑んだ法制史家による「天皇の歴史」。「不親政」と「刃に血ぬらざること」こそが天皇の伝統であり、それゆえに邪馬台国の時代から現在にいたるまで、「統合の象徴」として存続しえたという。その後の日本人の天皇観に大きな影響を与えた必読の論考。(講談社学術文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hyena_no_papa
4
いずれ読まねばと思いつつ数十年。未消化に終わるやを恐れて久しく手に取ることのなかった本書を思い切って繙いてみたが、やはり難しかった。世界に類を見ない天皇制という国家体制を、上古から20世紀に至るまで通観し、「不親政」という語を視点として考察する。古代以外の部分については冥いので評する力を持ち合わせないが、歴史事象をつなぎ合わせて綴る日本通史とは違い、古来の天皇制について考えていく上で確かに必読の書かもしれない。戦前の皇国史観を以て天皇制と捉える向きには概括的にしろ踏まえておくべき視点ではないだろうか。2020/12/30
さとうしん
4
「天皇不執政」は邪馬台国以来の日本の「伝統」であり、真の日本の「国体」であることを論じる。これに「押し付け憲法」論をミックスすれば、日本人よりも外国人の方が日本古来の「伝統」をよくわきまえているということになるが…2016/07/24
nagoyan
3
優。本書は昭和57年山川出版社から刊行され、講談社学術文庫となったものだが、本書の前身「天皇―天皇統治の史的解明―」は昭和25年の刊行である。実践的には法制史的な「平和憲法」下「象徴天皇」制の史的正当化理論といえよう。邪馬台国卑弥呼のプレ天皇時代から現代までの天皇と権力の関係を「統合」という観点から一貫して読み解く。律令制的天皇制、プロシア的立憲君主制のような外来制度が力を得た時期を除いて、一貫して天皇は緩やかに日本社会を統合する存在であった。それが本来の「国体」であったとする。なお本郷和人の解説もよい。2011/08/20
figaro
2
天皇親政は、歴史的には稀な現象であり、天皇統治の起源にまで遡って、「アメノシタスメラミコト」にいう「統べる」とは、統合の意であり、人々の声を聞き、武力を用いずにまとめ上げるのが、伝統的な天皇像であることを述べている。大化の改新以降、律令を範としたが、そこには禅譲を認める徳治の観念が含まれており、万世一系性と矛盾するものであった。元々、徳川幕府は天皇により統治を委任されたものではなかつたにも関らず、大政奉還、王政復古となったのは、統治の実力が伴わなかったからであるという。説得力に富む。2020/04/16
check mate
1
日本国憲法が定める象徴天皇制は、歴史的断絶ではなく、むしろ「不親政」という伝統に忠実なものだ、という指摘は興味深い。本郷和人先生の文庫解説も様々な倒錯を含んでおり面白い。2016/07/18
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