内容説明
家族、学校、自然、思い出、風と香り――どうか故郷を、福島を返してほしい。国語教師である福島在住の詩人が、被災以来、憑かれたようにツイッターで詩を書き続けている。怒りと悲しみ、絶望と希望、そして死者たちへの鎮魂。そこに暮らす者にしか産み出せない言葉をつむぐ。俺は修羅だ、詩を書き続けるしかない!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
けんとまん1007
7
テレビ番組で偶然知った和合さんの詩。穏やかな朗読の故に、かえって、迫ってくるものがある。帯にあるとおり、まさに現在進行形で福島で暮らす詩人の祈り・声。余計なものは一切ない言葉。言葉の持つ力、儚さ、脆さ、危うさ、危険性・・・いろんなものがあると思うが、最後には可能性という力があると思う。今の時代だからこその言葉がここにあると思う。2012/12/02
YOS1968
6
被災地福島、甚大な原発被害の地から発信された詩。ツイッターから発信された詩は多くの人の感動を呼び一冊の本になった。言葉は力強く、余震の続く故郷から呟かれる臨場感は新しい詩の形であるのかも知れない。2011/12/11
貧家ピー
5
「詩の礫」と同時期、2011年6月の出版。震災直後、福島の春の風景、目に映るもの全てに黙礼を捧げる。2021/02/12
aoi
3
何か違和感があった。これは詩でないと。私は詩への幻想を持っているからなのだろうか、和合さんの詩は難しいように感じられた。そのままに数冊を読んでいて、ふと思った。これは日記だ。思いだ。叫びだ。そう気づいたら難しく感じなくなった。この本を読んだのは「黙礼」を知りたかったから。込められた様々な意思があった。黙礼しないという意思もあった。「黙礼」は幾度も繰り返されたが同じものはなかった。使い込まれて最後には、軽さと重みが増していた。2015/04/18
読書ノオト
1
震災から3ヶ月で出版された、2011/4/10-5/16の詩人和合亮一さんの言葉たち。ひとつひとつ、胸を殴打されるよう。「風を返してください 土を返してください」気仙沼に立ったあの日、すべてが流された、ということがどういう出来事なのかを体で感じた僕は、言葉を失った。言葉を失う時に、言葉を失ったことを示す言葉を、語り得ないことを語る語りを、和合さんはもがき苦しみ魂を掻きむしりながら探している、そのもがきそのままの詩集。ページをめくるたびにその魂に突き立てられる爪の鋭さを感じて、自分の無力さに打ちのめされる。2022/09/09