内容説明
息を飲む程の明快さと、余すところのない学問的な厳密さが、奇蹟のように手を取り合って進む。“アントロポス”の永劫の生と、抵抗する「犬」の戦いの轟きが、惨めな現状追認と停滞を痛撃する。俊傑・佐々木中の第一作にして哲学的マニフェスト、新論考を付した完全版。ミシェル・フーコーの厳密な批判的読解から不意に現れ出る、その「蜂起の魂」とは何か。絶えざる「真理への勇気」の驚嘆すべき新生。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
harass
70
フーコーの権力論とそれ以降と著作順に追っていく。フーコーの概念はラカンよりもわかりやすく、個人的に他の本などで覚えている知識があるせいもあり、ほかのレビュでよく見るただ知識を整理し紹介しているだけという感想がわからなくはない。文体や語りに面白さが感じられないならそんな感想がでてもおかしくない。フーコーの迷走を丹念に読むのは刺激的のは確かなのだが。まあとにかく個人的宿題本を読み通せた。なんどか読み返したい魅力がある。この著者のとっつきやすい入門には講演録「切りとれ、あの祈る手を」をおすすめ。2018/06/13
Aster
49
入門書解説書と言ってしまえばその通りだし、ラカンとフーコーは特に目新しい解釈もないといえば恐らくそうなんだろう(そういう意見をよく目にする)、まぁそんなことは全くもってどうでもいいことです。久しぶりに本当に面白い本を読みました。内容に対しても触れたいのですが、完全には理解していませんし、書く余裕もない。なのでいつかは再読したい。2021/02/26
白義
13
ラカン、ルジャンドル、フーコーの三人の一本線の通った秀逸な解説書でありながら、結論は新しく根拠を創れ!革命しましょうか!文学書け!芸術に戦え、ダンスを踊れ!とアジる佐々木中節。根拠律の配分、権力による上からの主体化を言ったルジャンドルに対する、下からも含めた多様な権力戦略の観察者となった中期から後期のフーコーを内在的に、批判的に読み込み最後はドゥルーズとキュニコス派で締める。この世界と主体の根拠付けのあり方を示しながら、それを永遠に多様な力が蠢く夜戦時空と見て戦いを煽るのは危ないけど面白い2011/11/06
1.3manen
9
フーコーの『監獄の誕生』は今でも権力のあり様を考察するのに不可欠な文献。権力は細部に宿りたもう(74頁~)の副題は、権力は機関そのものに内在するばかりか、個人間にも存在する力関係であることを裏付けるものに思える。「監獄から出た者は要注意人物として警察や社会の監視下に置かれ、世間の冷たい目のなかでふたたび就職することもままならない苛酷な条件に置かれる」(107頁)ために、再犯してしまうのだろう。社会がいじめているのである。世間の恐ろしさ。自慰撲滅キャンペーン(139頁~)。恐ろしい社会というか、犯罪増加か?2013/04/19
Shin
9
昨年ミーハーな気持ちで挑んで痛い目にあったフーコーの理路を、煽情的ながら真摯で(時に恥ずかしくなるくらいに)純情な佐々木節に伴われながら巡礼する歓び。長い、長い旅をした気分。今更ながら、哲学とはその提唱者の「テクスト」を丹念に辿りながら、一緒に右顧左眄し、戸惑い、語り得ぬものに歯噛みし、時に転回の羞恥とも愚直に向き合う営みであることを学んだ気がする。ダイアグラムの案出に、永遠の夜戦に、微々たる力ながらも・・・微々たる力であるからこそ、今日を特別と思わず、されど昨日と違う一日として参加し、読み、書こう。2012/05/08
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