貴志康一と音楽の近代 ベルリン・フィルを指揮した日本人

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貴志康一と音楽の近代 ベルリン・フィルを指揮した日本人

  • ISBN:9784787273048

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内容説明

明治末期に生まれ、日本とドイツを往復しながら、ヴァイオリンの演奏から指揮や作曲、果ては当時のニューメディア=映画制作まで取り組んだ貴志康一。「天才」と評され、ヴァイオリンの名器ストラディヴァリウスを日本人として初めて所有し、ベルリン・フィルを25歳で指揮しながらも、わずか28歳で生涯を終えた。この若き音楽家の人生と作品、その時代背景を総合的に分析して彼の魅力に迫り、人物を通して戦前期日本の社会をも読み解く。

目次

はじめに 梶野絵奈

第1部 貴志康一とは誰か

第1章 過渡期のヴァイオリニスト、その音と姿――成長の過程を通して 梶野絵奈
 1 日本でのヴァイオリンの学び
 2 第一回渡欧――ジュネーブ―ベルリンでの修業
 3 ストラディヴァリウスを携えて――日本楽壇へのデビュー
 4 二度目のベルリン――低迷、しかし充電も
 5 日本での再挑戦――新たな展開に向けて
 6 第三回渡欧以降――ヴィルトゥオーゾ・ヴァイオリン作品の創出

第2章 貴志康一が「作曲家」になるまで――学びの過程にみるその原像 堀内彩虹
 1 作曲の学びの過程概観
 2 作曲の特徴の芽生え

第3章 ベルリンの日本人――貴志康一と「日本」の表象 中村 仁
 1 貴志康一とベルリン
 2 ベルリンの日本人――ベルリンでの「日本」文化紹介と貴志康一
 3 日本の日本人――帰国後の貴志康一と「日本」音楽

第4章 「思ひ出づるまゝに」――随想の著述家、貴志康一 山上揚平
 1 筆を執る音楽家?
 2 「思ひ出づるまゝに」――随想という形式
 3 随想の音楽家、貴志康一

第2部 貴志康一の作品

第1章 「日本の洋楽」の音階と貴志康一の旋律 ヘルマン・ゴチェフスキ
 1 「日本の洋楽」の音階と和声
 2 「日本の洋楽」と作曲家のアイデンティティー

第2章 歌曲について――その変遷と貴志の原風景 子安ゆかり
 1 貴志の「歌」作品の概観と三つの時期の特徴
 2 歌曲「赤いかんざし」の複数の稿から見えてくること

第3章 ヴァイオリン曲について――ヴィルトゥオーゾの技巧と作曲の融合 梶野絵奈
 1 ヴァイオリンのヴィルトゥオーゾ・コンポーザーとは
 2 日本人ヴァイオリニストによる作曲のあゆみ
 3 貴志康一のヴァイオリン作品

第4章 文化映画『鏡』、自画像を超えて――映画監督・貴志康一 白井史人
 1 「映画監督・貴志康一」へ――貴志康一と映画
 2 文化映画『鏡』――二人の協力者
 3 モダンと伝統の共存――映像と音楽の相互作用を通して

第5章 ゆれる「日本」像のなかで――標題交響曲『仏陀の生涯』 中村 仁/白井史人
 1 組曲から交響曲へ――貴志の管弦楽創作と『仏陀』の成立
 2 「標題交響曲」への挑戦
 3 標題“交響曲”『仏陀』――第一楽章の分析
 4 “標題”交響曲『仏陀』

第6章 貴志康一とオペラ――『なみ子』~未完のプロジェクト 長木誠司
 1 オペレッタ『なみ子』
 2 『なみ子』の〈時事オペラ〉的特性
 3 〈日本的〉時事オペラ?
 4 ハーン問題
 5 可能性としての『なみ子』

第3部 貴志康一と時代

第1章 「天才」少年少女の時代 伊藤由紀
 1 貴志康一をめぐる「天才」言説
 2 戦前期「天才」報道の変遷――「読売新聞」を例に
 3 一九二〇年代前半の「天才」記事――無邪気で多才な「赤い鳥」型
 4 一九三〇年代後半の「天才」記事――親の意向による「早教育」型
 5 「天才」記事の主流の交替
 6 貴志康一の場合

第2章 欲望のコロニアルな対象――貴志康一の『鏡』と映画脚本『ニーナ』をめぐって 竹峰義和
 1 ウーファ文化映画としての『鏡』
ほか