内容説明
いま美術界を揺るがす最大のミステリー! 藤牧は生きているのか死んだのか、彼の作品は誰が作ったのか? このところ急速に評価され始めた戦前の版画家の生き様を描くノンフィクション。
目次
よみがえった遺作と伝記
幸福なとき
父のすべてを忘れない
図案家修業
創作版画というトレンド
「描くが如くに彫る」
かんらん舎と遺作展
ヨーロッパ現代美術へ
「気まぐれ美術館」の人
思想。右と左の青春
迷宮の入口に
数珠つなぎの疑惑
物語は連鎖する
日輪になった父
雨の夜
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
15
昭和10(1935)年9月、藤牧義夫はわずか24歳と8か月にして、だれにもなにも告げずに下宿があった東京浅草の界隈から忽然と消えた。その生死はいまだにさだかではない。彼の遺した主な作品は東京国立近代美術館に所蔵されている。代表作≪赤陽≫、そして総延長60メートルにも及ぶ桁外れの大作<隅田川両岸画巻>がある。僕がこの版画家を知ったのは、NHKの日曜日美術館の「生誕100年 藤牧義夫 モダン都市の光と影」だった。そして、このミステリアスな書名に魅かれて読んだ。藤牧はなぜ消えたのか、それを知るのは藤牧と最後に会2014/09/10
辺野錠
5
行方をくらませて消息不明の版画家と言うのもミステリーなのに現実はさらにミステリー! 生い立ちを追っていったら途中で細部が違う同一作品という謎が出てそこから作品の改ざん、捏造疑惑など不自然な点がボロボロと出て来てこれまで知られていた藤巻義夫像が虚像になっていくのがスリリングであった。特に作品がでっち上げられたという疑惑は想像の斜め上過ぎる。本当に何処へ消えたのか。一体何が起こったのか。誰がやったのか推測できてもその人は亡くなって藪の中で近代だというのに真相は闇の中過ぎる。2016/10/05
駄目男
4
タイトルに惹かれて読んでみたが意外と分かり辛かった。 確かにミステリー作品のような事実だが版画に対する知識もなく実物を目の前にして贋作問題を話されているわけもないので余計に難題だ。 藤牧義夫の足取りはまったく謎でこれでは失踪の意味さえ解らない。 確かに自殺とは思えない印象はうける。2014/04/06
kokada_jnet
2
題材は非常に面白いのだが。この著者の、思い入れ過剰&大仰な文体に辟易。読み進めるのが辛かった。2011/08/11
あきこ
1
衝撃的過ぎて言葉が出ない。何が真実なのかは全くわからないが若くして姿を消した藤巻の才能が惜しい。本人は尚のことだろう。本題の渦中にいる小野だが、彼は藤牧の才能にヤキモチのようなものを抱いていたのではなかろうか。自分の力を超えた才能に対する嫉妬の気持ちは、しかしプライドの高い彼は素直に認めることはできなかった。あくまでも上から目線でしかない。この事件の真実はどこにあるのか、藤巻はどこへ行ってしまったのか。そして藤巻の作品をじかに見てみたい気持ちも募った。贋作ではなく、真作を。2024/05/04