内容説明
復活した悲運の作家の青春小説集
泳いで、酔っ払って、泳いで、酔っ払って…。夏の大学町を舞台に、若い男女たちが織りなす青春劇。プール、ジャズ、ビール、ジン、ラム、恋愛、セックス、諍い、そして暴力。蒸し暑い季節の中で、「僕」とアキ、文子、道雄、慎の4人は、プールで泳ぎ、ジャズバーで酒を飲み、愛し合い、諍いを起こし、他の男たちと暴力沙汰になり、無為でやるせなく、しかし切実な日々を過ごす。タイトルの出典であるガルシア・ロルカの詩の一節「僕らは共に黄金の服を着た」は、「若い人間が、ひとつの希望や目的を共有する」ことの隠喩。僕たちは「黄金の服」を共に着ることができるのだろうか?
他に、職業訓練校での野球の試合をモチーフとした「オーバー・フェンス」、腎臓を患って入院している青年の日々を描く「撃つ夏」を収録。青春の閉塞感と行き場のない欲望や破壊衝動を鮮烈に描いた短篇集。「黄金の服」と「オーバー・フェンス」は芥川賞候補作品。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ワニニ
60
kindleにて。若く元気で、キラキラした希望と夢のあるのだけが青春というわけではない。鬱屈とした男たち、投げ遣りな女たち、内面に焦燥感や情熱を持ってはいるのに、そのまま放置した振りをするような… 閉塞的な世界で、それでも日々懸命に、前に向かっているような、そんな青春。やるせなさと共に、軽さに少し苛つくのだが、それは自分が青春を語るのには、歳を取ったせいか。逞しさと、何となくぼんやりとした光の射すラストに“黄金の服”を見た。佐藤泰志の小説は惹きつけられる。2017/06/24
いたろう
56
函館三部作の三作目として映画が公開される「オーバー・フェンス」を含む三編。東京から出戻って函館の職業訓練校に通う主人公に著者の姿が重なる「オーバー・フェンス」。子供たちに混じって少年院のようだと言われる職業訓練校に通い、あえて単調さの中に自分を追いやるかのような生活を送る主人公。遠い幻のフェンスを越える日はまだ先でも、少なくとも越えるべきフェンスは目に見えたか。そして、「あたしたちはプールで泳ぐか酔っぱらうかだわ」という夏の日々―表題作「黄金の服」。若者の閉塞感を切り取った珠玉の中短編。2016/04/15
hit4papa
54
41歳で亡くなった函館出身の作家 佐藤泰志の作品集です。芥川賞候補作「オーバー・フェンス」と「黄金の服」、「撃つ夏」が収録されています。いずれの作品も20代前半の男性が主役で、閉塞感の中に身を置きながらも出口を見いだせないでいる、人生のひと時が切り取られています。私小説風でありながら、それほど鬱陶しく感じないのは、乾いた文体のなせる技でしょうか。明日への前向きな余韻を残す「オーバ・フェンス」より、諦念に似た感慨のある「黄金の服」の方が小説としては良い出来だと思います。あくまで小説としてですが。2016/09/23
ばんだねいっぺい
48
一番、焦点が定まっているのは「黄金の服」。相変わらず、どこへ行っても行き止まりのような感覚を味わえる。 「オーバーフェンス」は、余白があるので、映画には、おあつらえ向きだと思った。 まだ、見てないけど、オダギリジョーで合ってるんじゃないだろうか。2017/04/26
メタボン
44
☆☆☆☆★ 佐藤泰志は、ひりつくような20代を書くのが本当に上手いと唸らされた。何者かになる前の、もがくような20代の青春。私にはもう失われてしまったその時。佐藤泰志を読むことで、その時の記憶をひりひりと思い出す。職業訓練校での世代の違う男たちとの交流と「さとし」という男の名前のような女とのやりとりが鮮やかな「オーバーフェンス」。閉塞的な病棟で死を思い、紙飛行機を飛ばす「撃つ夏」。不眠や潔癖症で不安定なアキとどこか動物的な文子が対照的な「黄金の服」。2019/09/24
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