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内容説明
家柄と知性、すべてに恵まれた外務大臣は、自分が見た恥ずべき夢を格下のライバルに知られていると悩んだ末に……「マウントドレイゴ卿」。南方駐在員の夫を亡くして帰国した長女が明かした夫の秘密とは……「パーティの前に」。みずからも様々な側面を持つ文豪モームが、偉大と卑小、高貴と下劣、引き裂かれた人間性を鋭く描き、その不可解さを浮き彫りにする珠玉の6編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ももたろう
56
主人公の肥大化し手に負えなくなった自尊心の唯一の治療法ーそれは「謝罪」だった。自分が悪いと思ったら、間髪入れずに誠意を込めて謝罪する。簡単なことなのに、簡単じゃない。それを邪魔するのが自尊心。人は誰しも「私が正しいのだ」と思いたい。マウントドレイゴ卿は、その自尊心ゆえに苦しむ。また、マウントドレイゴ卿の夢の話と現実の奇妙な一致は恐ろしい。これは「現代科学では解明できない出来事」の比喩だと捉えたが、何か言葉で表現できない恐ろしさがある。ユング心理学の「シンクロ二ティ」を文学作品にしたのかな?2016/11/26
KAZOO
52
モームの短編集は本当に面白いという気がします。人間研究にはかれの短編集をしばらく読むことをお勧めします。この本には有名な「雨」を含めて6つの短篇が収められています。どれもこれも皮肉な落ちがついています。2014/12/18
りつこ
39
面白い!全く古さを感じさせないのは、人間どの時代においても不可解な存在だからなのだろうか。野暮ったく見えた女性が輝くような魅力を放ったり、完璧な政治家が悪夢にとりつかれたり、敬虔すぎる牧師が本人さえ知らなかった本性を現したり…。説明のつかないような人間の行動や心情を描きながらもその筆致はユーモアたっぷりで優しい。モームをもっと読まなくちゃ!(と読むたびに思う)2015/04/27
星落秋風五丈原
37
「ジェイン」「マウントドレイゴ卿」は「ジゴロとジゴレット」にも収録。「パーティの前に」は「カジュアリーナ・トリ―」に収録。2019/02/20
藤月はな(灯れ松明の火)
35
「ジェイン」は女の自分より劣っていると思っていた同性に対する嫉妬や立場の逆転に胸がスカッとしました。「雨」はキリスト教信者(あるいは西洋文化)の違った文化を持つ人々へ向ける無意識の傲慢さや自分たちが潔白な存在と思い込んでいても状況の変化や人間の本性によってぼろぼろと剥がれていくことが仄めかされています。個人的にはこの作品は人間の本性の汚さを知っているにも関わらず、人間の存在を美化する宗教に疑問を持つ人は心の琴線に触れると思います。この本が好きになったならば同じ作者の「手紙」もお勧めです。2011/10/25




