内容説明
没後もなお人気が高まるばかりの作家・藤沢周平。本書は、埋もれていたエッセイを発掘し、没後11年を経て編まれた未刊行エッセイ集に、さらに新しく発見された8篇を追加した最後のエッセイ集。創作秘話や苦手な講演に冷や汗をかいた話、時代小説の受難についてなど、意外な一面を窺い知ることができる。政治的なことからは距離をおいた氏には珍しく、三島由紀夫の自決に言及している文章も。決して驕らず、「普通が一番」と言い続けた国民的作家の貴重な肉声。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
タツ フカガワ
19
没後11年(2008年)に出た未刊行エッセイ集の文庫版。書名のとおり故郷山形県にまつわる話題が多い。作品に関するものでは『白き瓶』の「長塚節の歌」や『回天の門』の「孤高の志士 清河八郎」を興味深く読みました。身辺雑記では、藤沢家の夫婦喧嘩「文句、あるか」や、大好きな演歌歌手「小野由紀子の表現力」に思わず笑いがこぼれます。それに巻末の阿部達二氏の解題・解説が素晴らしく、また藤沢本に手が伸びそうです。2020/07/30
生活相談屋
4
藤沢周平のエッセイ集。この人はあまりエッセイなど書かない人かと思っていたが、結構書いてるんですね。しかも小説の時には決して見せない、おちゃらけた面が出てたりして。藤沢周平ってストイックなだけじゃなくて、こんなおふざけもする人だったんだと、ちょっと意外な発見だった。2016/03/20
秋良
3
昭和の雰囲気に触れられるのが良かったかな。2018/12/09
かしまさ
3
藤沢周平の小説以外の文章を初めて読んだ。どうしても小説を読んでいるとその作者も登場人物と同じようなイメージで捉えてしまうけど、そうではない一面が見られるのは新鮮。ただ40年も前の文章も入っているので、時代が違うなーという感じはある。2015/11/17
きくちゃん
2
藤沢氏のエッセイ集だが、既刊から漏れていたものを没後に再編集して出版されたものだそうである。そのため5章からなる内容ごとにそれぞれテーマも文体も異なり、たかがエッセイといえど首尾一貫したものが見受けられず、ただ文章を寄せ集めただけのもので全体に希薄な印象を受けた。そんな中、口語体で書かれたⅠ章目だけはエッセイの神髄が随所に散りばめられていて肩ひじ張らずスムーズに読むことが出来る。軽妙洒脱な文章はどこか辻まことを思わせ、時代小説の文体を読みなれた藤沢周平らしからぬ意外な一面を垣間見た気がします。2017/05/21