内容説明
週刊誌の見出しや難解な現代思想文には、なぜ括弧が多用されるのか？ さまざまな領域でみられる「括弧という現象」を分析し、括弧のパワーの秘密を明らかにする、ユニークな現代コミュニケーション論。
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目次
第１部 括弧という現象（括弧をめぐる遍歴 括弧という現象 括弧の歴史）
第２部 括弧・意味・行為（括弧の意味論 括弧の行為論 括弧の現在）
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
80
「 」『 』（ ）〈 〉“ ”などの括弧の使用が、どのような意味をもたせようとして使用されているのか、その遍歴と現象を解き明かす。特に哲学など人文科学系で多用される括弧である。その使い方は、会話文や、ある言葉を目立たせたいとき、読みやすくしたいとき、言葉を補ったり説明したりするとき、「この言葉は自分の言葉ではない」と区切る使い方などがある。文章の途中でこの区切る括弧は、どういった事態が引き起こされるのか。アレコレと考察している。→2021/05/24
袖崎いたる
5
統語によった統語論的括弧と、意味と語用とによった意味論的括弧の分類からはじまり、前者を読み易さ程度とみなして早々に後者の方へ論を進める。括弧によって区切ること自体が意味生成そのものであることは、別に現代思想の文体の特権という訳でもないだろう。取敢えず論理階型の種差とか西欧で支配的だと一部で言われている超越感覚なんかでも解説できるのかもしれないが、言語使用において斜に構える構制が倫理的にというか存在論的に保障されていることを、デリダ‐サール論争のデリダの側に寄り添って説く感じか。とはいえ括弧の多様は苛つく。2017/02/26
竹花 樒 - Shikimi Takehana
5
「括弧」とは区切ることである対象を「カプセル化」する働きである。いわば「ココ」から「アソコ」への指示作用が文章の論理階型をずらしてしまう。木村はこの順接の経路を「投写」と、逆を「引用」として投写構造を類型化する。括弧的な現象によって「意味」は変化に曝されるが、コミュニケーションを通じて多義性を保ちながらもコンテクストに依拠して決定される。あの「窓から逃げていく」欠落を埋めるようにして意味を補完しようと試みる心理作用こそが括弧の持つ引力の「正体」なのだ。「括弧」は共犯関係を取り結ぶべく、われわれを誘惑する！2011/06/30
とりもり
4
週刊誌の吊り広告に乱発される括弧や白抜き文字、バラエティ番号でウザいほど出てくるテロップ、淀川長治の「あの」。一見何の相関性もなさそうだが、広義の括弧とみなすことで共通の意味論が見出されるのにビックリ。途中の「括弧の意味論」の「投射構造」は、面白いが腑に落ちないところもあった。帯の「謎かけする、共犯する、誘惑する」というコピーは、後半の「括弧の行為論」を上手く要約している。最後の「ご利用は計画的に」は、実はこれが書きたかったから本書があるのでは？と思えるほど秀逸なエンディング。オススメの一冊。★★★★☆2015/05/04
メルセ・ひすい
3
15-2赤14-89☆美しき水車小屋の娘 という文は複数の読み方ができる｡美しき「水車小屋の娘」とすれば美しいのは娘だが､「美しき水車小屋」の娘 とすれば､美しいのは水車小屋で､娘は別に美しくなくてもいいことになる｡…週刊誌の見出しや難解な現代思想文には、なぜ括弧が多用されるのか。様々な領域でみられる「括弧という現象」を分析し、括弧のパワーの秘密を明らかにする、ユニークな現代コミュニケーション論。 2011/04/21
