内容説明
警察のストーリー通りの調書と、疑惑の証拠鑑定によって、二五歳の青年は殺人犯にされてしまった。判決が確定し、服役も終えた後、真犯人が名乗り出てきたことで、時計の針は再び動き始めたのだが……司法の不条理に青年と家族はどのように立ち向かったのか。過ちはいつまで繰り返されるのか。戦後日本の冤罪事件の原点、弘前大学教授夫人殺害事件の顛末を新資料を盛り込んで描き出す、迫真のノンフィクション。
目次
第1章 教授夫人殺害
第2章 冤罪を作るもの
第3章 獄中からの手紙
第4章 真犯人の告白
第5章 逆転する運命
終章 那須与一の未裔として
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
雨巫女。
14
《私‐図書館》冤罪はなくならなければいけない。しかし、真犯人や冤罪にしてしまった人に社会はもっと厳しくすべき。2011/09/04
駄目男
12
弘前大教授夫人殺し事件とは、昭和24年8月6日深夜、青森県弘前市で発生した殺人事件と、それに伴った冤罪事件のことをいう。この事件、以前から、その存在は認識していたが詳細に関してはまった知らない。併し、古書店で見つけたので長らく書棚を暖めていた。どのようにして冤罪が生まれていくのか、その間、真犯人はどうしているのかを詳らかにしていくが、何ともまどろこしい推移で真犯人までたどり着く まどろこしいというのは、本書では初めから犯人が明らかにされており、犯行状況まで詳らかにされている。2021/12/09
4fdo4
11
昭和24年に25歳で殺人容疑で逮捕、二審で逆転有罪判決。 昭和46年に真犯人が名乗り出るが、再審請求の壁は高く無罪確定は昭和52年。 強引な警察、検察の捜査。 血液鑑定や精神鑑定といった法医学が鑑定人の独断と権威で進められる。 この本は終始、冤罪の被害者側から書かれているのだが、それが自分に振り掛かったらどうしたらよいのか恐怖を感じる。 裁判費用を捻出する為に、先祖伝来(那須与一の末裔)の武具や田畑、家屋を売り払い、世間からの差別にあった家族の苦労も筆舌に尽くしがたい物があったろう。2017/12/23
calaf
9
日本で戦後初、再審無罪となった事件らしいです。那須隆氏という、那須与一の直系子孫が被告人。戦後間もなくの事件との事で、無罪を勝ち取るのに28年...私は、リアルタイムには全く知らなかった事件ではあるものの...日本人としては知っておくべき話という気がします。2013/01/11
オランジーナ@
3
事実は小説より奇なりとはまさにこの本のこと。まず弘前事件において一番不憫なのは被害者の松永すず子であることは当然であるが、11年の時間を無実の罪で奪われ、家族も非難の的になり、訴訟費用で金も無くなった、那須隆の苦労は名状しがたい。科学の名のもとに行われた丸井による精神鑑定、古畑教授の血液鑑定は科学の負の歴史の一つと言える。この本を読んで改めて人が人を裁くことの難しさ、人の記憶の不確かさがわかった。しかし国家賠償を認められなかったというのもおかしい話ですよ。2015/11/30