内容説明
まさかこんな行く末が待っていようとは。明治維新でふぬけになった元旗本の亭主を見限り、自らテキ屋の世界に飛び込んだ女房の奮闘を描く表題作。金髪の子を生み落とした明治政府高官の妻、政府お雇いの外国人に嫁いだ旧藩主の姫君など、激動の世を生き抜く女たちの心模様と身の処し方を細やかに綴る4編。女の哀しさと潔さが胸に迫る新・時代小説集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
じいじ
96
めっちゃ好いです。6年ぶりに再読しました。幕末から明治への激動期をチカラいっぱい生き抜いた女たちの喜怒哀楽を丁寧に描いた四編。表題作の主人公は、別称へび女房・きち。へびの皮で商売を立ち上げて大成功、極貧にあえぐ家族を救います。きちのイライラ解消法は、脚でする座布団廻しは笑えます。物語のヤマ場は、息子が惚れぬいた遊女の吉原廓へ単身乗り込む場面。粋な短歌の応酬のあと「遊女には遊女なりの誠がございます」の啖呵が小気味好いです。初冬の夜長を「小説って面白いなぁ」を存分に堪能できる一冊です。2020/11/26
ミカママ
89
アメリカ帰国機上の人となる直前に読了。静かな感動に包まれています。恥ずかしながら、男性作家さんだとばかり。どうしてこんなに女心がわかるの?「人を恋うるとは、おんぶお化けに取り憑かれたようなもの。あの人は今頃なにをしているだろう、今度はいつ会えるだろう、という思いが、背中にべったり張り付き、片時も離れてくれない。」ううむ、素敵な作家さんを紹介してくれた読友さんたちに感謝して、日本を後にします〜〜⭐️2015/07/09
いつでも母さん
43
ひさしぶりの蜂谷作品。読友さんのレビューに誘われて・・タイトル作、爬虫類系が苦手だったが、そう云う事では無かった(笑)ひと文字ひと文字を噛み締めて読了。何度もじんわりと涙が(鬼の目にも・・か?)『きち』に共感って云うより同化して読了。短編なのだがどっしりと読み応えありで、さすが蜂谷 涼だと思った。他の3作品も良かった。人物がこの4作中でリンクしてるのも良い!あの時代転換期の厳しさ、翻弄される女が切ない。2015/06/04
KEI
37
初読みの作家さん。明治維新の頃、自分の意思とは違う生き方をせざるを得ない中で逞しく生きた4人の女達を描いた短編集。やる気を無くした元幕臣の女房、外国人と結婚せざるを得な買った女達、歴史上の人物も絡めて書かれて、面白く読めた。外国人と結婚するとらしゃめんと呼ばれる時代に「きしりかなしき」のル・ジャンドルの優しさを知って、糸子(たま)はその後どうしたのか気になった。「うらみ蔦の葉」はミステリータッチで暗さの中に明るさが見えて良かった。2020/12/10
baba
31
読メさん感想で再読。江戸から明治に変わり、生きるための生活に境遇が大きく変わった4人の女性の短編集。どれも辛い人生の選択の中、苦悩に反問しながらも毅然と生きる女達に頭が下がる。特に「うらみ葛の葉」は辛く、苦しく切ないながらも救いがあって良かった。2017/03/02