内容説明
織田信長は、土砂降りの桶狭間を急襲して今川義元を倒し、雨の晴れ間を狙って長篠に武田勝頼を破った。大勝するのはいつも雨の時季。その陰には「気」を見る男がいた――。表題作の他、算法に惹きつけられた侍たちの悲劇を描いた「算士秘伝」、言い争いから富士登山に挑むことになった大奥下女の物語「女人禁制」など、自らも科学、技術、山岳の人であった著者の異色歴史小説全9編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ポチ
62
昭和30年から40年にかけての短編9話。数学、気象、科学、など専門的な事も上手く物語にして面白く引き込まれました。特にひょんなことから富士山に登る事になった大奥の女性の話など、今読んでも新鮮な面白さがあり楽しめました。2018/05/30
タツ フカガワ
52
中・短編9編を収録。気象庁出身という著者の経歴が伺える切り口の表題作から始まり、江戸天明期に空を飛ぶことに人生を懸けた男の「鳥人伝」(同じ題材に飯嶋和一『始祖鳥記』も)。江戸時代の和算学界の閉鎖的な悪弊に異を唱える男が痛快な「算士秘伝」など、読み進むほど面白さがいや増してくる、まさに粒選りの短編集で、最後の絵島・生島事件摘発から始まる徒目付の淡い恋と壮絶な探索を描いた中編「隠密海を渡る」を読み終えたときの満足感は久しぶりのものでした。2023/07/26
大阪魂
45
新田さんが切り拓いて失敗した?時代科学小説含む中・短編9編!科学絡みは江戸時代にグライダーづくりに命かけた「鳥人伝」とか和算に絡む「算士秘伝」「二十一万石の数学者」、天気予想が勝負や出世に絡む「梅雨将軍信長」「赤毛の司天台」、大化の改新に時刻告げる機械が絡むって「時の日」の6編!その他に女人禁制の富士山に登った大奥女中「女人禁制」、幕府に逆らって灯台の灯を守った「灯明堂物語」、絵島事件と伊豆七島の利権巡る暗闘描いた「隠密海を渡る」!ハッピーエンド少ないから人気でーへんかったんかな?でも知らん歴史楽しめた!2025/03/22
金吾
35
○理数系の視点をもった著者らしい短編集です。特に表題作は気象のプロの面目躍如を思わせる作品でした。他に「隠密海を渡る」「時の日」が良かったです。2023/04/29
金吾
27
科学者や技術者、気象という著者らしいチョイスの短編集です。2024/05/16