内容説明
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山男、雷獣や雷鳥、石羊、蛇タコ、ウナギになる山芋、一足鶏、くらっこ鳥、遊歩する魚介、波に乗るタコブネ、大海蛇。奇妙な生き物に対する江戸期の人々の豊かな想像力と好奇のまなざしを本草書から読み解き、日本人の動物観・生命観を浮かび上がらせる。
目次
序 説話と本草学
第1章 「山人の国」の柳田國男
1 柳田國男の山人論
2 笑う山人、悟る山人
3 人か猿か
第2章 『信濃奇勝録』の異獣のこと
1 「山の神のチンコロ」再考
2 雷獣と雷鳥
3 名づけをする本草家たち
第3章 蛇、化してタコとなる
1 台湾の田鼠
2 メタモルフォーゼする生命
3 中間形態の妙
第4章 讃岐の妖怪博士
1 天狗爪石考
2 弁惑の論理
3 家鳴り伝承と合理主義
第5章 一足鶏と鶏三足
1 四本足のニワトリ
2 霊鳥から怪鳥へ
3 見世物にされる幻獣
第6章 もう一羽のくらっこ鳥
1 小鳥たちの前生
2 感情の共同体
3 脚絆と襷
第7章 遊歩する魚介たち
1 ホタテが散歩する話
2 イモ畑のタコ、ニラ畑のナマズ
3 ハリセンボンが上がる夜
第8章 江戸の大海蛇
1 あやかしの正体
2 船を乗り越える怪魚
3 ムカデクジラ、オキナ、そして北海の大魚
初出・関連論文一覧
あとがき――ケサランパサラン的幸福感
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スプリント
8
妖怪と未確認生物が生まれた背景を豊富な史料をもとに解説しています。植物から生物が発生するという説は現代の知識を元にするとかなりグロテスクに感じますね。2017/06/12
HANA
7
江戸時代の文献には斯様に魅力的な動物が生息していたのであるな。三本足の鶏や柳田国男と山人の関係、波を蹴立てて走る帆立貝や船上を横断するアヤカシ等、魅力的な動物がこれでもかと紹介されている。ただただ先人の知への渇望に頭が下がる思い。2010/11/13
梟をめぐる読書
6
動物ニ非ズ、サリトテ妖怪ニ非ズ。そんな実在と非実在の中間にいるなんとも妖しげな動物たちが、多数取り上げられている。なかでも面白かったのが三章のメタモルフォーシス考で、山芋がウナギになったり、竹の葉がイワナになったり、もはや形態からのアナロジー以外のなにものでもないヘンテコな変態の伝承が、ここぞとばかりに列挙されている。水に漬けておいた山芋が翌朝ウナギに化けていたら……さて、あなたならどうしますか?2011/11/06
水無月十六(ニール・フィレル)
5
学科の教授に貸していただいて読書。妖怪とか幻獣とかそういう話が好きな人には非常に楽しい本だと思う。ただ、論文をもとに論考したものなので、堅苦しい文体であることには注意すべき。田鼠、化して鶉となるというメタモルフォーゼの話、人が鳥になる話などの論考が面白かった。本草学、博物学、民俗学も面白そうだなと思ってみたり。言葉では表しきれない面白さ。個人差はあるかもしれないが、実際に読んでみて確かめるべき。2014/09/05
kthk arm
4
2021年38冊目。電子図書館にて読了。「伝承学」から妖怪や幻獣の正体を読み解いていくという、大変に興味深い内容。論文なので読むのに苦労するとこもあるけど、楽しかったです。2021/05/05