内容説明
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あらすじを知っただけで満足していませんか?現代語訳に頼らず、自分で読みとくレッスン。物語の作者と膝を交えて対話する悦び。
目次
第1章 あづまくだり-プロローグ(第一段?第八段)(女はらから住みけり
かのまめ男
むぐらの宿に寝もしなむ
我が身ひとつは
宵々ごとにうちも寝ななむ
露と答へて消えなましものを
うらやましくも帰る波かな
あさまの岳に立つ煙)
第2章 あづまくだり-主部(第九段)(道知れる人もなくて、まどひ行きけり
八つ橋といふ所 ほか)
第3章 あづまくだり-エピローグ(第十段?第十五段)(たのむの雁
空行く月の巡り会ふまで ほか)
まとめ テクストとしてのあづまくだり挿話群
あづまくだり挿話群(第一段?第十五段)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ハル
11
古典をこれほど面白いと感じたことはない。伊勢物語の表現を洗練されたものとして大切に扱い、そこに置かれた一文字にまでこだわり丁寧に現代感覚に当て嵌めてゆく。訳の分からない言い回しや不自然な解釈は一切ないため、染み込むように伝わるものがある。抱いていた「をとこ」の移り気な印象が、恋に一途で繊細な貴人に様変わりする。音からの想起ではなく、文字の並びから場面や心情を鎖状に連ねる仮名文字ならではの世界構築に感心。難解な古典も光の当て方次第でこんなにも魅力を放つ。ひとつの物語に対する筆者の考察のときを想い感嘆する。2020/06/17
吉田裕子
5
国語学者(≠国文学者)による、『伊勢物語』冒頭15段の精読。古来の多数派の解釈に疑問を呈するところ多々、というか、その疑義で全編が構成されている(特に渡辺実氏に批判的。永井和子氏の解釈に対してのみ概ね好意的)。“後代の人が読んで違和感を持った部分に恣意的な補完がなされ、憶測的な解釈になっている”という筆者の問題意識までは共有できるが、その後に提示される筆者の読み(例えば、女はらから・都鳥の解釈)が正しいかまでは、私にはまだ判断のつかぬところである。10-15段を東下りのエピローグと見る位置付けには頷いた。2021/03/06
ますたけ
2
前書き部分より。「更級日記」の第一段に、等身大の薬師仏を家族や周囲の人も気付かないまま、見捨てて京に出立する記述がある。そんなことあり得ない、と自分自身も思っていたので筆者の主張に成る程と思う。「女はらから」も「わか紫」も「ほとびにけり」も、これまで腑に落ちなかった部分に対して、疑問を感じて良いのだ。どの現代語訳を読んでも、どの高校の古典の先生に聞いても、肯定されないだろうけど。2022/02/06
albatross
1
『伊勢物語』第1〜15章段までを一貫したテクストとみなして読解する、画期的な研究書兼講読書。 ▶︎仮名文学独特の《複線構造》という考え方になるほどと思わされた。伝統的な注釈に安易に便乗せず、整合性を持って読解しようとする筆者の真摯さが伺えた。賛否両論あるようだが、それは時々垣間見える語気の荒さによるものか。内容的には筋が通っているように感じる。
小澤 泰裕
1
最初の「女はらから」の解釋から引きこまれた。さうだよね、從來の解釋つて變だよね。2013/03/22