内容説明
「あの人はいい顔してる」と言うことがあります。とても魅力的な表現ながら、どういう顔がいい顔なのかわかりにくい面もあります。そこで本書では、写真家荒木経惟さんが、いい顔についてあらゆる角度から論じ、いい顔とは何か、どうすればいい顔の持ち主になれるのかについて、徹底的に語りつくします。アラーキーの呼び名でおなじみの荒木経惟さんは、2010年5月で70歳を迎えます。また、写真家生活も50余年になります。09年に自身のからだに見つかったガンと闘いながらも、過激な問題作を次々と発表されています。一方で、荒木さんが思い入れをもって撮影してきたのは、“顔”です。自身の写真家生活は「顔に始まり顔に終わる」と言い切り、いまなお、『日本人ノ顔』シリーズなどを通し、顔を撮り続けています。顔をテーマにしながら荒木さんのお話は、女性観、男性観、人間観、死生観にまで広がり、この写真家の人間への興味、思索の深さには唸る思いがいたします。政治、社会、文化、芸能、スポーツ……、あらゆる世界で「いい顔」が少なくなったいま、多くの方に読まれ、この国に「いい顔」があふれることを願う一冊です。
目次
第1章 顔こそヌードだ
第2章 いい顔のつくり方
第3章 女のいい顔
第4章 男のいい顔
第5章 顔は見られてこそ磨かれる
第6章 みんなが知ってるあの人の顔
第7章 街が顔をつくる
第8章 死に顔で人生がわかる
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
keroppi
32
表紙の写真がいいなぁ。荒木さんの撮る人は、どれもいい顔をしている。愛がある。エロスがある。哀しみがある。ストーリーがある。人生がある。そして死に顔まで撮ってしまう。人の顔ってドラマなんだなぁ。電車で読んでいて、思わず周りの人の顔を見てしまった。2017/09/06
ジョニーウォーカー
24
顔の写っていない老人の遺体と、斜め上からの表情をとらえた老婆の遺体。そのどちらも、著者の父と母が亡くなったときに自ら撮影したものだという。「いったんフィルムに刻まれたら、それは永遠に残る。記憶の方が消えていくんだよ。だから悪い顔は撮っちゃダメ」。これまで“裸のエロスを撮る人”くらいの認識しかなかった自分にとって、この本は天才アラーキーの本質を知る一冊となった。「究極のヌードといったらやっぱり顔なんだ」。表紙の母子像を見ていると、あらためて彼の言葉に納得させられる。ほんと、いい顔してるなぁ。2010/09/23
たまきら
22
この人こんなに面白い文章書く人なんですねえ!大うけしました。表紙に惹かれた娘がところどころ読んでは「このひとおもしろい!」…擬音語が多いからなんだな。人への視点がオープンで、つきぬけてて、ああ、下町っ子なんだ。陽子さんやチロは見てたけど母子のはぜひ見たいな。お父さんの写真が顔を愛する人なのにクロップされていて衝撃だった。今年読んだエッセイの中では一番あけっぴろげでその人と会っているような本。恋に落ちちゃいそうだわ。2016/04/21
gtn
17
「顔がいちばんの裸」という著者。言い換えれば妻陽子の顔が一番との告白である。照れもせず、妻は自分といる間はどんどんいい顔になった、「陽子とアタシとの間には、揺るぎない愛情があったから」という始末。陽子の肖像が美しい。反論できない。2019/09/22
CherryBlue
15
出会ってからの時間はわずかなはずなのにこんな素晴らしい表情を撮影できるのは、テクニックとかそんなんではなく人間の器なんだろう。被写体は自分の鏡って言葉に大いにうなずける。2010/09/09