内容説明
1968年、五月革命のまっただ中のパリに降り立ってから、パリで青春を過ごし、パリで暮らした玉村豊男が、今あらためてパリを訪れ、変わらないレストラン、カフェ、ホテルなど、本当のパリの魅力をオールカラーイラストレーションとともに叙情豊かに綴る。
目次
プシノー親父の店(カフェ・ラ・パレット ムッシュウ・プシノーの習慣 ほか)
カフェ・モナコの夜(クモの巣ブドウ カルチエラタン ほか)
ゴーギャン夫人のクルミ菓子(友人たちからの手紙 暗く長い桟橋 ほか)
パトリック・デゾネの遍歴(ミュニッシュ午前零時 君はルイ・アラゴンを見たか ほか)
カーヴ・ミヤール閉店中(ヴェルニュ氏のサンドイッチ 南の島から届いたメール ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
fu
7
世界各地で若者による反体制運動の時代に学生だった著者は、授業が進まないのを好機と考え、欧州各地を周遊。 パリに1年半滞在で、その後は旅行で時々訪問して42年間のパリの様子を綴った本。道を歩けばあちこちで知人に出会うという街に自然体で溶け込んだ暮らしぶりが素敵。パリでは経営者が変わっても店の看板はそのまま、ということがよくあるらしい。随所に素敵な挿し絵があり、パリの雰囲気がよく伝わる。2014/06/08
しんこい
6
建物や街並みが同じに見えても、店も人も雰囲気も30年前とは同じではない、そういうものということを文章と絵で描いているかな。2013/09/14
ソバージュ
3
kindle 。42年間に留学と旅行で足蹴よく通ったパリ左岸(カルチェラタン、サンジェルマンデプレ辺り)のカフェ・レストラン・ホテル・人々の変遷を、著作の描いた風景画50弱作品と共に記されたエッセイ。学生時代の様子、経営者が変わり衰退していく店々、ルイヴィトンが出店して街の形相が変わったこと等、興味深く読んだ。2019/03/22
あきこ
3
パリの街は移動祝祭日、そんな言葉を思い出させる紀行文。学生のときパリに留学して以来パリの虜になった作者の思い出話は地図と絵画に彩られて現実感を抱きながら読んだ。ただ、最近のパリには魅力がなくなってきていくことが少なくなった、という作者の言葉が悲しい。なぜなら今でもまだパリは祝祭日の雰囲気は十分に感じられるからだ。ただこんな風にパリを楽しめたら本当のパリを知ることができるのだな、という憧れを持った一冊だった。2015/10/07
ろべると
2
留学した1968年から2010年までに至る著者のパリ滞在を、味わい深いスケッチと文章で回想する。この人も6区のサン=ジェルマンデプレ界隈を根城にしているので、自分が前回滞在して歩き回った場所と重なり思い出深い。かつての左岸の反体制的な空気は大方失われたと著者は言う。パリの街並みを形作るファザードは変わることはないけれど、中に入る店舗は一部の有名店を除いて経営者の栄枯盛衰や世代交代とともに移りゆき、当時の栄華は見る影もない。華やかなパリの裏側に広がる人生模様を見つめる著者の温かな眼差しが印象深い。2021/11/19