内容説明
江戸から京に配された東町奉行所の青年同心・大仏(おさらぎ)伝七郎は、かつて近藤勇や土方歳三と剣技を磨いた仲であった。新選組が尊王攘夷派を襲撃した池田屋事件からひと月後、池田屋で奉公していた若い女が刺殺された。伝七郎は手掛かりを求め、壬生(みぶ)の屯所に足を運んだ。そして歳三から一通の書状を見せられる……(「池田屋の虫」)。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
えみ
54
完全脇役の新選組、こんな接し方も新鮮で面白かった。京の都で称賛と侮蔑を受け続ける忖度無しの姿を民衆に近い目線で覗くことができる。主人公は試衛館に通い、天然理心流の剣を学んできた近藤勇や土方歳三など新選組幹部たちと知り合いの東町奉行所の青年同心・大仏伝七郎。幕末と言えば政治に纏わる騒乱にしか目を向けてこなかっただけに、一般庶民の事件が当たり前にあったことを忘れていた。大仏は性急に流れていく時勢の波に煽られるように次々起こる難事件に挑む。と同時に、新選組の栄枯盛衰を間近で見て彼らを思う。各々の生き方が沁みる。2022/01/25
ドナルド@灯れ松明の火
13
まさに新撰組外伝。江戸出身だが京都東町奉行所の同心大仏伝七郎の視点や感情を通して幕末の京都、新撰組の栄枯盛衰を描いている。本作では、荒っぽく先鋭化していく「壬生狼」こと新撰組に対して批判的なスタンスではあるが、新撰組メンバの解釈の仕方が新鮮である。近藤勇や沖田総司らと一緒に理心流を学び、彼らとも親交がありながら中立な考え方をする伝七郎の正義感、人情が清々しく、また不穏な世相の中での京の庶民の諦観や逞しさも感じられとても良かった。2013/06/03
きくちゃん
3
これは面白い!訳あって数か月読書の出来ない状態が続いた中で本当に久しぶりに読んだ作品(おらおらでひとりいぐもだけは例外)新選組外伝とサブタイトルがあるが、彼らが主役ではなく多摩時代からの近藤や土方、沖田などと親交のあった京都町奉行所同心・大仏伝七郎の眼から客観的に見た新選組を通して幕末の動乱の渦中にある京都の町の様子が必然的に分かるような展開になっており、その手法がかなり斬新。しかも冴えた筆致が鋭く時代背景を映しこんでいて傑作である。為政者と市井の様子が同時に理解出来るという点でも秀逸な作品。2018/06/28
森の猫
2
新選組の1番華やかだった頃から、少しずつ変わっていき、鳥羽伏見の戦いの頃までを外側から、そっと見届けるお話でした。2013/06/10
青
2
基本的には捕り物帖の雰囲気なのだけど、主人公がかつて天然理心流を修め、近藤や土方、沖田、山南とも面識がある設定で、新選組とつかず離れずの位置を保ちながら時には批判的になったりするあたりが、新選組外伝として異色でおもしろかった。また、大政奉還によって幕臣たちの立場の変遷については考えたことがあったが、もっと下で民衆の傍にあった岡っ引きたちがどうなったのか、まったく考えもしなかったので、そこに焦点を当てられているところがおもしろかった。2010/12/12
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