集英社文庫<br> 千年樹

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集英社文庫
千年樹

  • 著者名:荻原浩
  • 価格 ¥605(本体¥550)
  • 集英社(2010/03発売)
  • 2025→2026年!Kinoppy電子書籍・電子洋書全点ポイント30倍キャンペーン(~1/1)
  • ポイント 150pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784087465433
  • NDC分類:913.6

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内容説明

東下りの国司が襲われ、妻子と山中を逃げる。そこへ、くすの実が落ちて――。いじめに遭う中学生の雅也が巨樹の下で……「萌芽」。園児たちが、木の下にタイムカプセルを埋めようとして見つけたガラス瓶。そこに秘められた戦争の悲劇「瓶詰の約束」。祖母が戦時中に受け取った手紙に孫娘は…「バァバの石段」など。人間たちの木をめぐるドラマが、時代を超えて交錯し、切なさが胸に迫る連作短編集。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

しんたろー

199
普段の得意技であるユーモア溢れる作風と異なって意欲的な実験作と感じた。田舎にある大木に関わる8つの短編は、人の愚かさや理不尽さを渇いたタッチで描き、哀しい無常観が漂う…各編では過去と未来が交錯する構成で多面的に人生のアヤを見せている。滑稽さが顔を覗かせる部分もあるが「ハードな荻原浩はいかが?」と問い掛けられた気分…連作形式ながら通して読み終わると一つの長編として考えられていたものと気付いた。どの話も癖のある味だが、ハートウォーミングな『バァバの石段』は丁度良い甘さだし『瓶詰の約束』はホロ苦さが秀逸だった。2019/03/15

KAZOO

140
荻原さんがまた違った分野で楽しませてくれました。千年以上前に育ったクスノキにまつわる現在までのはなしがいくつかありそれぞれにまた二つの話に分かれて人間のおろかさ(?)や情愛などを題材としています。いくつかのはなしだけをピックアップしてドラマ化や映画化ができるのかもしれません。実験的な側面もあるのかもしれません。2019/01/01

jam

116
相対性理論による時間の概念は絶対的なものだけれど、私たちが感じる時間は相対的なものである。そしてそれは主観に依存し一律ではない。絶対的な時間は数字で表すことができるけれど、相対的な時間を表すことは不可能である。私たちは「時間の流れ」を客観的に共有はするけれど、感覚的に共有することはできない。千年という長い時間が「くすの木」に流れ、物語の最期にそれは断たれる。「くすの木」の前を人は次々に通り過ぎたけれど、「くすの木」はそれ以外の何物でもない。これは実存を問う物語でもあり、無常を描いた物語とも言えよう。2018/05/16

TATA

112
おや?いつもの荻原さんと少し趣きが違ってゾクッとする感じの短編集。平安の世に落ちたくすの実は人の世の因縁を吸い取り、樹齢千年の霊木となる。時を超えた因縁を晴らすのも人間の業。重めの作品が多いのですが、それでも荻原さんらしいユーモアを感じる「バァバの石段」とホロッとする「瓶詰の約束」が好み。やっぱり荻原さんはカラッとした明るい作品が好きですねー。2019/04/16

dr2006

104
大樹に刻まれた記憶を穿つ連絡短編集。満たされず死んでいった人々の思いが幾重にも堆積している様でちょっと怖かった。千年樹は、千年の時代を超えてそびえ立つ楠の大樹だ。この樹に人々は引き寄せられ、癒され、煽られ、そして放たれてきた。植物はアレロパシーという「自らのテリトリーを守る為に他の植物の生育を阻害する科学物質」を放つらしい。大樹はそうやって人々の生死に関わりながら千年生き続けてきた。異形を成したウロに刻まれた人々の記憶が、縦横無尽に広がった枝葉に伝わり、潮騒のように騒めく。残暑の夜におすすめの一冊。2020/09/06

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