内容説明
狭いところに入りたい──。旧財閥の跡取りで船舶会社副社長の風宮にはおかしな性癖がある。秘書となった幼なじみの祐一朗は、その唯一の理解者で支配者であった。家族に萎縮し、仕事の重圧で心が壊れかけていた風宮は、デスクの下で祐一朗の足下に蹲り安寧を得る。薄闇に包まれた狭い空間は、安らぎと同時に恍惚感をもたらした。まるで祐一朗の執着に閉じ込められたようで…。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
カナン
43
納戸、クローゼット、シーツカバーの中。財閥の御曹司で船舶会社副社長の風宮の秘密は狭所に閉じこもることでしか精神的にも性的にも安寧を得られない事。彼の特殊な性癖を理解しているのはただ一人、八年ぶりに再会した幼馴染み祐一朗。終始この二人だけで完璧に完成されているザ・共依存な関係が後ろめたくて罪深くて爽快。職場のデスクの下、スーツケースとどんどんエスカレートしていく暗く狭い場所への渇望と、永遠にその暗闇に風宮を閉じ込めておきたい祐一朗の屈折したまま純化していく愛情。果たして先に常軌を逸したのはどちらだったのか。2016/01/24
えんび@灯れ松明の火(文さんに賛同)
31
閉ざされた狭い空間に包まれる事で生まれる安心感。なんかわかる気がする。タイトルと表紙の印象だと、もっと病んだ変態的話かと思ったら意外にまともな恋愛物だった。ま、性癖的に「まとも」とは言い切れないけど、それを裏付ける過去や家庭環境の設定がしっかりしているので十分理解できる。一部「良い子は絶対に真似しないように」なスーツケースプレイにはつい苦笑い。近所に、しょっちゅう荷物引っぱってお茶してるいいオトコがいたら噂になる事必至(笑)最後に受けが攻めに言った一言が冒頭のかくれんぼシーンに繋がりきれいにまとまった。2012/05/25
マッコリ
26
お互い執着しあって歪んでいる二人だけどなんだか幸せそうでほほえましい。いやーお似合いのカップルだわ。2014/05/21
さち
21
狭く閉ざされた空間で安らぎと恍惚を感じる異様な性癖の風宮と唯一の理解者であり風宮に執着する祐一郎。陰鬱で特殊な設定なのにこんなにも面白く読めてしまうのがすごい。スーツケースの使い方がとにかくエロくて普通の行為よりも萌えてしまった。とにかく仄暗くてねっとりした依存愛だけれどそんな相手に巡り合えている2人がなんだか羨ましい。囚われてたのは風宮だったのか祐一郎だったのか。ラストを読む限りそんなことは2人にはもう関係ないんだよね。この秘密を死ぬまで共有できる喜びと興奮と深い愛情。斜め上をいく展開に終始魅せられた。2010/11/01
メイ&まー
21
最後の数行がすごくこの作品自体を表してて印象的です。薄闇で二人してお互いに曖昧な優しさにたゆたっている感じ。二人の間にあるのはまっさらな純愛ではないでしょうが、執着したい祐一朗と隠れたい願望をもちながらそっと包まれたい風宮は、これ以上なくしっくりくるんでしょうね。不思議な雰囲気がとても魅力的でした。2010/07/05