内容説明
誰にでも、失いたくない楽園がある。息苦しいほどに幸せな安住の地。しかしだからこそ、それを失う痛みは耐え難いほどに切ない。 誰にでも優しいお人好しのエカ、漫画のキャラや俳優をダーリンと呼ぶマル、男装が似合いそうなオズ、毒舌家でどこか大人びているシバ。花園に生きる女子高生4人が過ごす青春のリアルな一瞬を、四季の移り変わりとともに鮮やかに切り取っていく。壊れやすく繊細な少女たちが、楽園に見るものは――。 『ミミズクと夜の王』 の紅玉いづきが挑む、初の現代小説
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
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158
痛い。痛い。裂く、壊す、叫ぶ、泣く、憤る…。感情という感情が渦を巻くように入り乱れる。負の感情のたかぶりが、こちら側の感情までも乱してしまうほどの威力を放つ。4人の女子高生が主役の物語。4人だけの放送部のの部室、4人だけの時間を過ごす。隔絶した世界の中で、彼女たちは笑ったり、ケンカしたり、ときには傷つけあったりもする。どんなに頑張っても、助けを求めても、その時期がくるまでは甲斐なく、徒労に終わったように見えてしまう。でも、無駄なものはひとつもない。徒労に思えたことも、次のステップにつながっているのだから。2015/05/12
くろり - しろくろりちよ
102
お人好しで、それ故人を病気にしてしまうほど優しいエカ。可愛らしくて、それ故どろどろに堕落していきそうなマル。格好良くて、それ故女の子にコンプレックスを抱えるオズ。頭が良くて、それ故学力という信仰に囚われたシバ。そんな、不自由で狭い世界に生きる少女。でも、それぞれが旅立っていく。「もうわたし達の花園にはかえれない「わたし達の愛した春はもう来ない「それがどれほどの絶望でも、苦しみでも、ここから未来に向かわなければならない」去りゆく、少女時代。ぎゅっとなる心。痛い、そんな時代があった自分のどこかが、とても痛い。2012/04/28
Shinji
82
う〜ん、やっぱ女の子って恐いよなぁ。いろんな感情抱えこんで、見せなかったりするもんなぁ… 今みたいに学校ってとこでカーストが確立してる時代ではなく、携帯電話を持ってる人がまだ少数派の時代の話なので、現在アラフォー世代には懐かしく感じるんじゃないかな。エカの肯定するための優しさ、マルのあけすけな可愛いさ、オズの持腐れのカッコよさ、シバの信条と内情。女子高生であればよくある話かもしれないけど、オトコじゃ絶対にない話!これで最後とか見える区切りはあるけど、今やっているどんなことも「これで最後」のはずなんだよ!2015/08/03
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68
図書館レンタル。誰にでも優しいお人よしのエカ、漫画のキャラや声優をダーリンと呼ぶマル、男装が似合いそうなオズ、毒舌家でどこか大人びているシバ。高校生の女の子4人の季節にちなんだ物語。ライトノベルと侮るなかれ、細やかな感情の描写が大胆かつ繊細に描かれています。最後の方は思わずホロリときました。内容は基本的に家庭環境などの悩み、コンプレックスの話が続く為正直愉快で楽しい物語ではありません。だからこそ、若く情熱に満ち溢れていた力強い感情が描かれています。 青春時代特有の成長ドラマにご関心のある方にお勧めします。2012/02/10
とら
61
どんなに歪な形をしていても、これらは紛れも無く青春であるといえる。その期間にしか感じることが出来ないことだってあるはずだ。ガーデン・ロスト。必ず生きていれば出会う、何かと何かの狭間の期間。自分には何も肩書きが無い、もはや”自分”しかいない、その期間に入ることが、何よりも恐ろしい時期があるのだ。自分にやっと出来た楽園を、失いたくない。自分にとっては正にそれが最近のことで、鮮明にその感情が思い出せる。しかしそれでも新しい場所で生きていこうと前向きになったら、自然と楽園がまた生まれた。楽園は再生する、何度でも。2015/08/07