内容説明
池波正太郎のエッセイには――男の本音がある、人生がある、生きる楽しみを享受する男のリズムがある。作家への道を拓いた幼き日の観劇の一日、手と躰で物を造る感覚を養った旋盤工時代、行きづまった小説の結末を見いだしてくれた飼い猫ネネの話、映画のこと、衣食住について、現代人の見失ったもの、仕事の裏ばなしなど……。手練の切れ味を見せる“とっておきの51話”。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
113
池波さんのエッセイで自分の生涯を振り返りつつさまざまな食べ物や映画などについて描かれています。また新国劇や新橋演舞場などについてもかなりかかれています。池波さんの原点はやはり新国劇の脚本なのでしょうね。2017/09/27
じいじ
94
池波さん二作目のエッセイだが、これまためっちゃ面白い。とにかく「食」へのこだわりが凄い。15年も毎日食べたものを几帳面に日記につけている。食通・食道楽は自他ともに認めるところらしい。天婦羅へのウンチクは目から鱗である。氏の好みはてっきり日本食と思っていたら、和洋関係なしとのこと。ロースカツを肴にして酒を呑むとのこと。映画・演劇・水彩画…と、多趣味で好奇心も旺盛な人である。あれだけの人気作品を、いったい何時書いているのだろうか? 睡眠時間が気になるのだが…。とても制限の字数では書き切れない・・・です。2021/10/12
佐々陽太朗(K.Tsubota)
61
どの章も興味深く読ませていただいたが、とりわけ「残心」が良かった。六十年前のことのお礼に米原駅を訪れたある老人の話、電話は用談が済んだからといってそそくさと切ってはいけないという話が書かれている。要は他人との関係の中で、どういう心がけが必要かということだろう。人を出し抜き、蹴落としてでも己を利することに汲々とする昨今の世相に対する痛烈な批判だろう。池波氏が最も大切にしたのは”心の余裕”だったのだろう。演劇や映画を観るのも、旨いものを食うのも、酒を飲むのも、すべてその心がけの為せる技だったのではないか。2024/07/31
いちろく
47
恥ずかしながら、鬼平犯科帳も、剣客商売も、仕掛人・藤枝梅安も、真田太平記も、他の小説も1冊も読んだ事がない。むしろ、私にとっては食べ物エッセイのアンソロジーでよく出会う、それが池波正太郎。著者の幼年期から60手前まで、時系列問わず色々な内容が描かれたエッセイ。生き方そのモノが小説の主人公と錯覚してしまう程濃い内容にも関わらず、どこか一歩引いた客観的な描写の内容に、読んでいて不思議と落ち着く。初夢の内容で締められていた辺りも時期的にピッタリで今読めてよかった。戴いたメッセージ通りの内容でした。感謝!2018/01/01
こばまり
39
執筆当時の池波先生御歳56歳。なんたる貫禄。実際より年寄り扱いされてそれが嫌でないとのこと。後半に年の瀬から新年にかけての所感がありタイムリーだった。鬼平もだが食べ物の描写がさりげないのに生唾が湧くほど美味しそう。表紙イラストがキングクリムゾン的。2024/12/22
-
- 和書
- 零戦の誕生 文春文庫