- ホーム
- > 電子書籍
- > 教養文庫・新書・選書
内容説明
九〇年代以降、明日への不透明感は増す一方であり、人びとの抱く閉塞感も高まるばかりだ。社会思想史を学ぶとは、まさに、過去の思想との対話を通じて現代世界を眺める座標軸を獲得することにほかならない。近代啓蒙からポストモダンまで、重要思想の核心をクリアに一望する入門書決定版。
目次
第1章 現代思想批判から近代啓蒙思想の見直しへ(一九八〇年代の社会思想とは何であったか 世界史の転換と社会思想の転換―一九九〇年代以降 ほか)
第2章 社会思想史は何を軽んじてきたか―自然・宗教・悪(進化論の社会観―進歩史観から偶然史観へ? 近代啓蒙思想と宗教 ほか)
第3章 近代啓蒙思想をきたえなおす―立憲国家・市民社会・超国家組織(コスモポリタニズム、ナショナリズム、インターナショナリズム 市民社会論と福祉国家論 ほか)
第4章 分断された社会をつなぐ思想―歴史・文化・対話(欧米中心的進歩史観からの脱却と相対主義の罠 「解釈学的理解」とは何か―批判的で対話的な歴史・文化理解のために ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sayan
11
近代啓蒙からPOMOまでを概観する本書は、繰り返し読みたい内容。新書という手軽さもあり、ポイントが掴みやすい。なかでも興味深かったのが、近代啓蒙思想が獲得した「正の遺産」に対するカントの向き合い方だ。征服ではなく訪問の時のみ「歓待の条件」は尊重され、日本の鎖国政策を評価している点は新鮮だ。その意図を誰が判断するのか不明だが。また、世界市民体制を促すものとして「商業精神」という利己心を重要視しもっとも信頼できるのは金銭力であるという心性を付与することで…と、カントをリアリストとして評価している点は興味深い。2017/11/27
読書家目指すで
4
それなりに思想家で有名な著名人を抑えていないと読みにくいであろう本 。内容は分かりやすい2015/09/29
D.Okada
4
文明の進歩史観が根底となる社会思想史を批判的に乗り越える、的なコンセプトで近代啓蒙思想に触れたり解釈学の視点を置いてみたり、専門的に深い内容のものではないけれど、要点はしっかり押さえられていて、まさに「社会思想史を学ぶ」人につけ手始めに読むには最適な本だと思った。2010/04/15
saiikitogohu
3
「アレント…、祖国の法律と上司の命令に従った自分の行いに何らやましいところはないと無罪を主張したアイヒマンを、平時であればごく普通の人間であるにもかかわらず、戦時には何ら良心の呵責を感じずに大量虐殺を行ってしまう類型の人間とみなします。そうした人間に欠けているのは、自分と違った環境にいる他者についての「思考の欠如」であり、それを「悪の月並みさ(banality of evil)」と彼女は呼びました」114「グローバル権力の君主政体的要素と貴族政体的要素との混合政体…」続2019/04/05
naokovski
3
高校の公民の授業の副読本にしたいような平易でよくまとまった本。新書の鏡だわ。山脇さんの最後は必ず「グローカル」でまとめてくるところがだんだん愛おしくなってきた。 2010/10/13