内容説明
三度の脳出血により高次脳機能障害者となった一人の女性医師が、心身をおそう数々の出来事に戸惑いながらもつぶさに観察し、「見えない障害」を世に知らせることを人生の新たな仕事として発見していった感動の記録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
チャーリブ
54
整形外科医の著者は、37歳のときに3度目の脳卒中を起こし、重い脳障害(高次脳機能障害)の後遺症を抱えた生活を余儀なくされます。空間が(遠近感のない)二次元に見えたり、数秒前の記憶がなかったり、時計の文字盤が読めなかったりと様々な障害のエピソードが客観的・医学的に、そして明るいタッチで描かれています。気が滅入るような話の中にも希望の光が見いだせるように書かれているところがすばらしい。たいていの人はいつか「障害」と生きる日が来ます。いろんな意味で参考になる一冊。○2022/10/27
Roko
37
様々な試行錯誤を重ねて生きている山田さんが持つ患者としての視点、医師としての視点、その両方が重なることってとても意義あることだと思うのです。これまで患者側から伝えられなかった部分を、もっともっと多くの人に伝えて欲しいなと思うのです。2022/01/08
藤森かつき(Katsuki Fujimori)
36
著者は凄く強い方だと思うし、何より驚異の生命力だ。脳に深刻なダメージを受けて、高次脳機能障害を抱えて、こんなにも意欲的に頑張れるのは並大抵のことではない。症状は全く違うのだけれども、希望を持つことができる。「障害をもつ本人には、あきらめないでほしいと言いたいのです。」この言葉に強く勇気付けられた。「時間が必要だということ、少しでも生きている脳みそさえあれば、これから新しいことを覚えていけるということ。」あきらめないでほしい。心からそう思う。言語は比較的無事で、とはいえ障害を抱えて苦労しながらの執筆に感謝。2019/12/23
mukimi
33
37歳までに三度の脳出血を発症し高次脳機能障害とともに生きる女医の経験談である。障害を受け容れ、整形外科医を諦めながらも、自分だからこそ出来ることを模索し脳リハビリ医へ転向し、一生回復!生き残ったぞー!と勝利宣言をしながら毎日に感謝して生きる姿勢には心が奮い立たされる。そして、一人息子・介護少年まあちゃんへの手紙には涙が溢れた。「まあちゃんがいてくれたからお母ちゃんは天国へいかずにすんだよ。」神経医学的にも子育て記録としても女医の闘病記としても貴重な記録である。大切に読み返したい一冊になった。2016/02/18
飯田健雄
29
この著作も高次脳機能障害に伴う認識の退行。著者が神秘の脳と書いているように、さらに脳神経医学は発展していくだろう。哲学のlebens raum は縮小してしまうのか。2020/06/21