内容説明
長い歴史を誇るウィーン・フィルですら一八四二年の創立だから二百年に満たない。つまりベートーヴェン(一七七〇~一八二七)の時代には存在しなかったわけだ。かように近代になって誕生した「オーケストラ」は、きわめて政治的な存在であり、戦争や革命といった歴史的大事件に翻弄されやすい。「カラヤン」をキーワードに十の都市の十の楽団を選び、その歴史を、指揮者、経営者そして国家の視点で綴った、誰もが知る楽団の、知られざる物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ざび
3
読み応え十分。後期ロマン派以降の作曲者や指揮者が目白押し。しかしやっぱりフルトヴェングラーとカラヤンに尽きてしまう。忘れてならないのはバーンスタイン。この時代が中心に語られています。この後に控えている吉田秀和の「世界の指揮者」が少しは理解できると思います。2011/03/20
ふみ
2
「カラヤンがかかわったオケ」という観点で選ばれた、世界のトップ10オケの歴史をつづる。オケが近代政治に翻弄され続けた存在であることがよくわかる。「歴史が終わった」今、音楽家たちは政治に翻弄されずにオケの間を自由に移動するようになった。オケの没個性化・平準化は、対立が終わり「幸せなオケ」になった証であるとする。個性は移動の制約や政治的対立による「不幸の産物」であったからだという説明が新鮮。2010/09/27
巨峰
2
世界の大10オーケストラの歴史を描いたかなり分厚い新書。ヨーロッパの文化においてオーケストラの存在というのは非常に重要で、時の政権や政治に翻弄されながら、もしくは、利用をしながら、演奏活動を続けた音楽家たちの姿が浮かび上がってくる。2009/08/22
vladimir-kyoto
1
オーケストラの紹介の書なんだけど、結局は指揮者を巡る政治と歴史という感じだ。2015/08/27
牧神の午後
1
世界の名だたるオーケストラの数々から10選ぶときに、カラヤンが振ったかを基準にした、と書いていて、あーた、一度も振っていないオケも「振っていない」関係ということで入れているってのはどうよ?まぁ、振ったオケばかりだとレニングラード・フィルなんて確実に入りませんからねっ。そうした御都合な選定基準はともかく(ライプツィヒゲバントハウスは入れて欲しい、とか)、各オーケストラに歴史あり。指揮者との出会いと別れのドラマの数々は、少しでもクラシック音楽、とくに演奏家に興味があるなら寝る間も惜しい面白さ。ただ、筆者の持論2011/03/21