内容説明
広島と長崎で、二度被爆した人がいる。戦後60年以上沈黙を保ってきた著者が93歳になり、重い口を開き語る半生。軍部の「正義」に疑問を持ちつつも、造船技師として派遣された広島で被爆し、命からがら逃げ帰った故郷長崎で二度目の被爆。戦後は米軍の通訳や英語教師として、原爆症と闘いながら必死で家族を守り続けた男が息子を原爆症で失った今考える「あの戦争」とは何だったのか。被爆者からのあまりに貴重な証言。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
青葉麒麟
6
幼少の頃に母親の自殺の第一発見者に為って終う壮絶な体験をし、二回も被爆して終い其れでも尚、後ろ向きに為らず前に向かって進んで行こうとする姿勢が凄いの一言。全部の言葉に重みが有る。2012/04/21
うき。
5
恥をさらけ出すようですが、二度の被爆を経験した方がいらっしゃるということを、想像してみたこともなかった。二次被爆と二重被爆はまったく別のことなのですよ!本としては、被爆以前のことに少々ページを割き過ぎという気はしますが、8月以降戦後に至るまでの淡々としつつも強い言葉をわたしたちは読むべき。2度の被爆が明らかであるにも関わらず、被爆証明から2度目の被爆の事実の記載が途中から消された…悪意を持ってではなく、消してもいいと思われたということが信じられない。まったくもうお役所というものは!2009/08/15
杏子
4
私もごく最近まで、二重被爆をされた方がいるということを全く知らなかった。勤務先の中学校に選ぶ本を見ていく過程で知ったようなものだ。この本も実際、中学校用に購入し、今私が読めたのは息子が夏休み用の読書の本として借りてきたからだ。どんな悲惨な光景が…と思いきや意外にも著者の半生を語りかける、穏やかで訥々とした文章に迎えられた。それだけに、著者の人生をえぐった原爆の恐ろしさが身にしみて感じ取れた。本当に、あってはならないものなのだと、著者の淡々とした文章からその思いを読み取った。著者はすでに亡くなっているが、2011/08/30
かりん
4
4:最近話題ですが、「二重被爆」自体がさらりと流されているように感じます。私は2年ほど前に知り、大ショックでした。理路整然とした文章ににじみ出るいろいろ…。■戦争は人間の心の中で起こるものだ。太陽が地上に落ちた。人間が人間でなくなってしまった光景。165人。撫で斬り。戦時標準船。大広島炎え轟きし朝明けて川流れ来る人間筏。うち重なり焼けて死にたる人間の脂滲みし土は乾かず。街なのか、墓場なのか。お母さん、元気ですか。善意の贈り物の交換。2011/01/28
sasha
3
出張先の広島で、帰郷した長崎で。2度の被曝を体験した人はその情景を淡々と描く。それが却って、凄惨さを感じさせる。読み継がれるべき書。2011/03/07