内容説明
八年後に小惑星が衝突し、地球は滅亡する。そう予告されてから五年が過ぎた頃。当初は絶望からパニックに陥った世界も、いまや平穏な小康状態にある。仙台北部の団地「ヒルズタウン」の住民たちも同様だった。彼らは余命三年という時間の中で人生を見つめ直す。家族の再生、新しい生命への希望、過去の恩讐。はたして終末を前にした人間にとっての幸福とは? 今日を生きることの意味を知る物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yu
1336
荒んだ心に染み渡るサプリメントのような1冊。何度読んでもやっぱり「演劇のオール」が一番好き。早乙女のおばあちゃんの家でみんなで暮らす映像が浮かんでくる。「太陽のシール」の土屋もいい。「冬眠のガール」はかわいすぎる。「深海のポール」のおじいちゃんも最高。『死んでも死なない』。いいセリふだ。2012/05/16
ヴェネツィア
1195
SF仕立てではあるけれど、SFとして読むにはあまりにも矛盾だらけ。もちろん、そんなことは著者自身が重々承知の上。一種のファンタジーだろうか。そうはいっても、ここに描かれるのはきわめて日常的な風景。ただし、3年後には小惑星の衝突によって人類が滅亡するといった、いわば限界状況下においてである。そこにはユートピアは当然としてもディストピアもまたない。ある種の健康的でしたたかな日常が営まれているのだ。彼らはそこで「とにかく生き」て行くのだ。伊坂幸太郎は村上春樹の影響下にあると思うのだが、ここに決定的に欠如して⇒2017/06/19
ehirano1
1001
その辺にいくらでも在りがちな話なのですが、伊坂さんが書くとなんか一味違いますね。本書では絶望に対して中高年より若者の方が強く前向きであることが描かれています(例外の中高年が何人かいますがwww・・・)。中年の私としては本書の若者達に学ばされた一方、「なぜ中年がこれ程にも弱いのか」ということに考えさせられました。解のヒントは本書に登場するパワフルな一部のおっさん達にあるとは思うのですが、さてさて。2017/04/15
とも
954
人が「生きる」事に主題を置く為に、「死」に焦点を当てて書かれる8篇の短編集。鋼鉄のウールの苗場さんの一言「明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか?」「あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生き方なんですか?」また、深海のポールの土屋さんの一言「死に物狂いで生きるのは、権利じゃなくて、義務だ」伊坂さんらしい、この言い回しがたまらなく好きやな。2016/03/14
馨
749
あと数年で小惑星が地球に衝突し皆一緒に一生を終える状況なら自分ならそれぞれの話の主人公たちほど落ち着いていないだろうけれど暴動を起こす気もないだろうなと思います。『生きることは権利ではなく義務だ』という言葉は今までに出会ったことのない言葉でした。響きました。また、恐竜が滅びた時もこういう状況で、次に出てくる生物が人間のことを恐竜と呼ぶかもしれない、という仮説に、生きものの歴史が今を生きている生きものによって断定されてきたのだなと妙に納得出来ました。2019/10/09
-
- 電子書籍
- 愛と怒りの女神【分冊】 7巻 ハーレク…
-
- 和書
- 最後の娘 創元推理文庫