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内容説明
石器時代の洞窟にはじまる「ドリンカーの楽園」はどう変化してきたのか? 宿屋(タヴァン)、イン、パブ、キャバレー、カフェ、ギャンゲット、ジャズ・クラブ……。19世紀から20世紀にかけて起こった酒場の革命とは? ギリシア神話、チョーサー、シェイクスピア、ディケンズ、バルザック、シムノン……。同時代の小説をも資料として読み込み、人間臭い特殊空間の変遷を活写する。(講談社学術文庫)
目次
第一章 酒場の誕生
1 洞窟の酒場
2 チョーサーの酒場
第二章 愉しきイギリス
1 シェイクスピアの酒場
2 「大旅行」時代の酒場
第三章 大都市のなかで
1 ディケンズの酒場
2 バルザックの酒場
第四章 世紀末へ
1 消えゆくロンドンの居酒屋 カクテル・タイムI
2 世紀末の酒場
第五章 二十世紀とジャズの時代
1 ワインと一九二〇年代 カクテル・タイムII
2 カクテル・エイジとホテルのバー カクテル・タイムIII
3 ジャズ・エイジの酒場
あとがき
学術文庫版へのあとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kazi
34
酒を飲まなくなって久しいが、そんな私にもこの本は面白かったです。「酒場の文化史」というタイトルだが、これはあくまでイギリスとフランスの、もっと言えばロンドンとパリのパブとカフェの文化史ですね。日本の屋台、居酒屋などは一切出てきません。やはり面白いのは西洋的な文化が爛熟した19世紀の酒場の記述だな。当時の雰囲気を描き出すために、ディケンズ・バルザックなどの作品から酒場のシーンが引用されており大変興味深い。ディケンズが描写する美しく豪華な酒場とそれを取り囲む貧民街が作る都市の光と影の対比が非常に印象的。2021/06/06
サケ太
20
原始時代の洞窟酒場をスタートとして、『オデュッセイア』で描かれたおもてなし。神話と、ヨーロッパで生きる人々の、生きる人々から見た“酒"と“酒場”の話。酒場の意味の変化。宿屋、娼館と兼ねていた部分。教会や修道院が宿屋を経営していた事。様々な人々が雑多に集っていた酒場という異様な空間。それが、時代を経るごとに細分化される。パブに、カフェに、レストランに。変化は歴史とともに、文化とともに起こり得る。いる。「ジン・レイン」という出来事はストロングゼロにも似るものを感じる。2020/08/06
kaze
11
前近代の酒場の地獄みよ。やはり胡散臭いものは周縁部に存在するのだな。文学作品を歴史的資料として使っているのが良い。その昔、酒場と宿屋は同じものだったからこそ19世紀ごろでも「宿屋の親父」が侮蔑的なニュアンスを帯びるのだと得心がいった。2021/12/16
hide
8
お酒の歴史は何冊か読んだことがあるが、酒場の歴史という切り口は初めてで楽しめた。 古くの酒場は宿や娼館と一体で、客層も分け隔てがなかった。都市化による需要増加によって酒場機能が独立するようになり、ターゲットとなる客層も分かれていく。都市空間の発展による酒場の変遷がよく分かるうえ、当時の創作物での酒場描写が紹介されるためイメージもしやすい良書。 産業革命期のイギリスで、貧しい労働者がビールではなく度数の強いジンを好むようになった話は現代にも通じるものがある。2021/04/16
タンシロ📚
5
面白かった〜。漫画ワンピースやジブリのラピュタや紅の豚、そしてドラゴンクエスト。それぞれに出てくる酒場がどんな時代の酒場で、どんな人たちが利用していたよか、そして中身は何を飲んでいて、どんな話で盛り上がっていたのか、この本を読んだらきっと、他の小説や漫画、アニメに出てくるちょっとした酒場の描写でニヤニヤできるに違いない。でもやっぱり酒場に女性が必要なのは、酒だけではなく身体も提供していたからだし、宿場も兼ねていたというのはつまりそういうことで、それは日本でも共通だし、今でも名残がある部分だよなぁ。2021/04/01