内容説明
井上文学の原点ともいうべき虚実皮膜の9篇。権力の弾圧を首の皮一枚で躱し、強かに生きる戯作者達。洒落や地口で技巧の限りを尽くし庶民の悲哀と反骨精神を活写。単行本未収録の表題作等、才気横溢の精選集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
onasu
7
井上ひさし氏の文章は、いいですね。 山東京伝とあって欠かせないのは、江戸の板元蔦屋重三郎。たまたま手にして、めくってみると、当然おられる、ご一行さま。先日読んだ島田氏の「写楽」とは、また異なる蔦重さんたち。最近、お気に入りです。 続いては、戯作者銘々伝。江戸の有名無名の戯作者たちを、係わりのあった者が語っていく。戯作者仲間だったり、弟子であったり。語るスタイルも、最後のオチも実に巧妙です。 あとがき、解説にもありますが、著者は江戸の戯作を愛して止まない。その愛が感じられる一冊でした。2013/02/09
AR読書記録
3
独白体の、最後にどんでん返しという構成の小品が続くと、正直少し飽きてくる部分はある。小説よりは、一人舞台で観たい感じもする。しかし、江戸の花火師、版木の彫り師、職人の技や心意気なんといきいきと描かれていることだろう。そこにぞくぞくしたし、それに井上ひさしの原点ともいえるという、黄表紙にもとても興味がわくな。2016/01/30
あくび虫
2
面白かったです。ひとつひとつの作品が物凄く慈しまれている感じがする。どれも素直には終わらないところが堪らない。不協和音を響かせるみたいにして締めくくられるのが、どうにも癖になります。2018/06/12
キリアイ
0
井上ひさし自体読むのが久々だったが、戯作者銘々伝はミステリー仕立てというか。最後にどれもどんでん返しがあって…。元々は独白形式はあまり好きじゃないのだが、面白かった。また、表題作は寂しいんだけど、あっけらかん?としていて、オチがとても良いと思った…。江戸の戯作者は知らなかったのだが、興味を持った…。2013/11/04
靖
0
有名・無名の戯作者を取り上げて想像力を駆使して紡がれる人間模様。作者の対象に対する視点の細やかさが堪能できる短編集。江戸もの好きにもお薦めの一本。2010/07/03