内容説明
七百年の時空を超えて『平家物語』は、死を美学化するものとして享受されてきた。能や歌舞伎、国語教科書の教材、小説・マンガと形を変えながら-。その固定的な視点・読み方を脱構築して、「常識」を打ち破るものの見方を得る題材としての『平家物語』の可能性を示す。
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目次
凡例
はじめに
第1章 教育/権力/物語――もう一つの〈源/平〉合戦
1 〈失恋の美学化〉に抗して
2 テクストは〈教育〉する
3 もう一つの〈源/平〉合戦
第2章 「教えられるのか」/「どう学ぶか?」という問題構制――〈理論〉が拓く地平
1 廃墟としての日本文学研究――〈戦前〉としての「いま」を生きる
2 テーマをめぐって――「文学教育」をめぐる問題系
3 〈学ぶ〉ということ――模倣と創造
4 インタレストから〈理論〉へ、そして不可能性へ――諦念を越えて
5 文学教育の抑圧性――いまブンガクは読まれていないのか?
6 『平家物語』を〈教室〉から救い出せ!――〈死〉の美学化に抗って
第3章 知盛〈神話〉解体――教室で『平家物語』を読むことの(不)可能性
1 教室で『平家物語』を学ぶということ
2 知盛の享受史
3 覚一本と延慶本の知盛
4 覚一本の知盛の文脈
5 知盛の見たもの/見なかったもの
6 知盛の美学化が差別化する失敗者たち
第4章 〈父―息子〉の『平家物語』――アンチ・ヒーローとしての宗盛の可能性
1 〈家〉から排除される宗盛
2 〈家〉と『平家物語』
3 戦場の宗盛(1)――〈主体〉になれない宗盛
4 戦場の宗盛(2)――〈父―息子〉関係の悲劇
5 〈父―息子〉関係の悲劇
6 涙を流す宗盛と涙の対象となる宗盛
7 言いよどむ物語
第5章 〈貞女〉の檻――〈知〉にダブルバインドされた小宰相
1 〈貞女〉死すべし――「男と女の間には」
2 〈女〉/〈男〉の行く/逝く/生く道――「思いこんだら、試練の道を」
3 〈貞女〉という拘束――「鍵をかけて時間を止めて、君がここから離れないように」
4 〈貞女〉としての小宰相――「ねえ、言って、ちゃんと言って」
5 〈地獄〉の妊婦――「時には母の ない子のように だまって海をみつめていたい」
6 〈怨霊〉化する小宰相――「うらみます あたしやさしくなんかないもの」
7 〈知〉のはざまの小宰相――「私、嫌いな男のタイプはフェミニストです」
第6章 熊谷直実の〈まなざし〉――死者の魂を分有する
1 「敦盛最期」の冒頭部
2 「狂言綺語の理といひながら」――覚一本の成立
3 最期譚としての「敦盛最期」
4 真/偽のコード――延慶本の場合
5 熊谷の〈まなざし〉――覚一本の場合
第7章 建礼門院の庭――『源氏物語』を読む〈女〉
1 狂言綺語の理
2 建礼門院の庭
3 鎮魂の位相
補章 マンガでよむ『平家物語』的世界――増殖する『平家物語』、あるいは物語へのとば口
初出一覧
あとがき
軍記物語章段名索引
軍記物語以外の本文一覧と索引
研究者人名索引
キーワード索引