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内容説明
「住」の不平等が拡大している。住宅政策は「普通の家族」だけが恩恵を受ける、経済刺激策のままなのか。独身者や困窮者も含め、多様化する人びとの暮らしを改善できるのか?
目次
1章 住宅所有と社会変化
2章 持家社会のグローバル化
3章 住まいの「梯子」(ベビーブーマーとベビーバスター 若年層の住宅条件 女性と住宅所有 不動産資産の形成)
4章 住宅セーフティネット
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しゅん
9
現代日本における住宅政策・住宅問題の基本的情報整理として頼もしい。戦前は持家が少なく、戦後に持家が増えたことが。持家増加は日本政府の政策として、会社に所属して、家庭を持つ、いわば「普通の人生」の「梯子」を登る国民の形成を目的としたものであること。つまり、日本における住宅支援は、多様な生活の在り方を拡張するのではなく、抑圧する方向に動いていた。欧米では福祉国家からネオリベラリズムへの変容が明確だったため、住宅の私有財産化が進むが、日本においては半端な変容に留まった。日本の特殊状況に今後どのように対峙するか。2022/06/26
N.T
6
ほぼ持家取得者のみを対象とする現在の住宅政策から住まいを必要とする人全てに中立な政策を。生き方によって「有利/不利」が生じない仕組みを。 2016年6月の「家賃下げろデモ」のステイトメント(声明)と本書の主張とは不思議なほど重なっている。 本書の出版が2009年3月だから、7年経ってやっと人々が声を上げたとも言える。2016/06/25
バーニング
5
そもそも住宅にかかわる政策が諸外国に比べてとぼしいことや、公営住宅も老朽化などで自治体の重荷であること。戦後一貫して家族が住まう住宅を企業が家賃補助するというかたちでしか、高い家賃を補填するすべがない。住宅扶助のような社会政策というよりは、もっと中間層の利益になるような政策が必要なのだろう。あとがきでは住まいや住宅の政策や諸問題にかかわる研究のとぼしさも指摘されている。2018/10/16
井上岳一
5
これは骨太。新書なのに、とても時間がかかってしまった。著者自身「読みやすいとはいえないし、地味なんだろうな、と思う。しかし、社会理解の鍵は、たいてい、それほど派手ではない」と書いているとおり、地味である。難しいわけではない。だが、とにかく考えさせられる。本書は、戦後の持家取得に偏った住宅政策の問題点をこれでもかと証拠をあげながら説き明かしていく。そこにあるのは、「標準」に援助を集中する日本政府のやり方だ。保守とネオリベ思想が結びつくとどんな悲劇が待っているかを本書は教えてくれる。必読。2012/11/12
モッチー
4
賢い家の買い方、いいマンションの選び方、リフォームのノウハウ等々、「住宅」について書かれた本は数多い。しかし、住宅の問題について、社会・経済・政策の観点から論じた本はあまりない。著者も、日本の住宅研究は専ら建築学の研究者が担ってきたため、社会問題としての住宅という観点に乏しいと指摘している。その点本書は、住宅政策という観点から住宅の問題を論じた堅実かつ貴重な本である。一方で、こうした本が貴重であるのは、日本において、「住宅問題は政治課題である」という意識があまりに希薄であることの裏返しなのではないか。2016/11/11