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内容説明
従来の倫理学や法哲学で議論が錯綜している「道徳の根拠」という難題に、人間行動進化学という理科系の知見を活用し、ユニークな視点で切り込む。新しい学問をわかりやすく解説。
目次
序章 「嘘をついてはいけない」と子どもに教える本当の理由
第1章 人は利益で動くようにできている
第2章 「利己的」な愛
第3章 友情と良心の損得
第4章 「善」は得、「悪」は損
第5章 「私」の利益になる「正しい社会」
終章 「自分のため」の道徳
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ATS
14
★★★ほぼ私が考えていていたこと(人は利益で動く)を、明文化してもらったような感じ。『人間の行動は、その「快」を志向し「不快」を回避することで生じる。(中略)われわれは、自分の利益に向けて動くように「できている」のであり、自らが意識している以上に「利己的」な生き物である』(P46-P47)に本書の提言は集約されていると思われる。著者の考えでは、道徳というのも短期的利益と長期的利益からみれば、ただ長期的利益を得るためのものに過ぎないとしている。いろいろ示唆を与えてくれる良書であると思う。2016/11/20
booklight
12
合理主義者の自己肯定本、といっては言い過ぎか。ここまで倫理は自己の利益のためにある、と言ってしまっていいのかと思うが、言い過ぎの持つ面白さはある。倫理的に悩むときも、自分に得するからいいか、と思えば楽になる(あの道端に落ちているごみを拾って捨てるべきかどうかとか)。個人的には利己的にもやってきてここまで来たけど、これからどうする?という点が今後の課題かな。状況証拠の進化論にその答えはないと思うけど。読メの書評が参考になり、フラットに読めたのがありがたい、読メ万歳。2018/10/07
ステビア
9
いいと思う。ただサブタイトル「利己的なのが結局正しい」は誤り。そんなことは言ってない。自然主義的誤謬はどうなんだ?2014/04/16
がりがり君
5
アントニオ・ダマシオのゾマティックマーカー仮説を根拠にし、人間の価値判断は感情による所が大きいのだとする。その上で人間の道徳感情がいかに進化してきたかを解く。無論心理学の行動主義に立ってたのではこんな議論展開は不可能言えよう。結局の所人付き合いというのはギブ・アンド・テイクなんだ(普通の人はそれを自然に行えるのだ)。でも正直べき論に展開してった後半はいらない。2019/11/10
HALI_HALI
5
我々の行動は全て利害損得から成り立っている。進化倫理学とは、道徳にこうした"利益"という客観的な根拠を見出す事で、従来の倫理学では踏み込めなかった領域に進む。人が選択に迷う時、実際には"長期的利益"もしくは"短期的利益"という2つの利益を比較しているのみ。例えば、"遊ぶ"という短期的利益を取るか、"勉強して一流大学に進む"という長期的利益を取るか、といった選択。友愛、夫婦愛、親子愛などというのも実は同じ原理に基づいている。実生活のふとした習慣、こうした学問は役立つだろう。2017/05/17