内容説明
今から70年前、日本はまるで別の国だった…。
国会にはヤクザの親分議員がいて、街では政府公認で売春が行なわれている。薬局に行けばモルヒネや覚せい剤が手に入り、カフェでは女給が流し目をくれる。サラリーマンはエリートで、独身女性の憧れの的。エロ写真は禁制品で、秘密のポルノ映画鑑賞会まで行なわれていた…。
20世紀最大の悲劇、第二次世界大戦に突入する前の日本、その新旧入り混じる、混沌の姿を解き明かす!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やすらぎ🍀
184
百年前の日本、昭和初期。今の常識は当時の非常識であることが多いため、ここに感想を残しにくい内容もある。欲望を追いかける人間を抑えることは難しい。走り出した勢いはなかなか止まらないものである。表紙は昭和四年、巨大なツェッペリン号を銀座松屋の屋上から見上げる人々の熱狂である。立ち上がる労働者、子どもたちの受験競争。思想弾圧、争いから逃げる人も多かった。東京丸ビルのランチは美味しかったそう。大衆雑誌キングは売れに売れた。先入観や思い込みを覆される情報が多い雑学本。いつの時代も人間の欲望で世界は動いているようだ。2023/08/16
もりやまたけよし
19
戦前の文献や写真等の資料をもとに、戦前の日本の文化、政治、経済、社会などの状況を、戦後の日本と比較もしくは連続性を検討しながら、34の記事にまとめた内容で、簡潔に戦前の通史がまとまっているのはとても読みやすくてわかりやすい。日本人の特性が、いまとあまり変化がないことを垣間見ることができる。いろんな策を弄して兵役を忌避するような様や、軍都多摩地区など新しく知ったものも多かった。2016/12/21
はる坊
18
戦前から戦後の高度経済成長が成し遂げられる下地があったり、徴兵されるのはみんな嫌だったり、ちょっと考えてみれば当たり前のことかもしれないけど、けど僕らは知らないことがたくさん書かれていた。戦前の日本を知るのにいい本だと思う。2015/04/23
マカロニ マカロン
10
個人の感想です:B+。昭和元年から14年ごろまでの昭和初期の世相や風俗に関しての意外な事実が載っている。この時代は世界恐慌、満州事変、二二六事件やがて太平洋戦争へと軍国主義の中で暗い怖いイメージだ。中島京子さんの『小さいおうち』の中でタキの思い出話に甥の次男の健史(映画では妻夫木聡)が「おばあちゃん、戦前の日本がそんな(明るい)わけないだろう。」と言っていたが、自分もそう思っていた。地方は貧しかったのだろうが、都会の「サラリーマン」生活はこの本のように割と豊かで楽しい暮らしをできたのも事実なのだろう。2016/05/28
ミュンヘン
7
知っているものも知らないものもあったけど、いろいろな角度から戦前の日本を語っていて面白かった。小泉純一郎の祖父は全身刺青で「いれずみの又さん」って言われてたというのは知らなくてびっくりした。「夜の蝶」の由来とか(エプロンのリボン)「白系ロシア人」の「白系」の意味とか(1917年ロシア戦争の赤軍と白軍の負けたほう)アジア人の留学生が一杯いたとか…。高校受験の熾烈さは今の比じゃないしサラリーマンはエリートだし。華族は即席で作られたってのも面白かったな。2009/11/14