内容説明
不治の病に逝った幼な馴染みの霊前で、誓いを立てた簪を独り見つめる材木問屋の心のうちも、容色盛んな若後家がなお胸に秘める亡くした夫との思い出も、秋風にひっそり揺れる赤まんまの花しか知らない。折檻、密通、盗癖だと町の騒ぎをはやす輩も、心のわるさに弄ばれ道を外した人々の苦い涙に気付かない。ゆえに仏の慶次郎は、苛む心の苦しみと忍ぶ心の悲しみに、今日も静かに耳をすます。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイプ
17
慶次郎縁側日記シリーズも第八弾になります。慶次郎が表立って活躍するというわけではないこのシリーズ、巻を重ねるごとに味わい深くなりなり読んでいて癒されます。好きなシリーズです。弥五ってなかなかいいじゃない。影になりそっと背中を押してあげる。前作の「脇役」をもう一度読み返したくなりました。2016/05/08
kazu@十五夜読書会
12
慶次郎縁側日記シリーズ。脇役の活躍がメインの短編集。2012/12/29
KAZOO
8
これもどなたかの推薦されていたので、購入していた積読本でした。本当は慶次郎縁側日記の何作目なのですが、これだけ読んでもいいのでしょう。短編集のようなものですがあまり慶次郎の出番はなさそうです。読んでいて藤沢周平さんのような感じがありました。若干暗い印象があります。人情の機微などが語られています。2014/02/15
北の親父
4
表題の「赤まんま」を代表に、秀逸な作品ぞろいでした。前作の「脇役」を読んでいて役立った。2014/05/12
水戸
3
吉次さんの、いいことをしようとして、いつも空回ってしまって、チェッ……、てなるのが毎回、なんとも言えなくいとおしいというか、かわいらしいというか……。いえ、蝮の親分に失礼だとは思うんですが(笑) うつろう人の気持ちの奥にある折り重なった思い出の作用。死した人の面影に悔恨を重ねて、悩み立ち止まる人情。素直になれないというか、言葉の選び方を間違えたあまり、なんだか妙な具合になってしまう人間模様。それでも、続いていく人の世の妙味を、今回もしみじみと味わわせていただきました。2016/09/20