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内容説明
お金を盗んだ美少年バジーニが、同級生に罰としていじめられている。傍観していたテルレスは、ある日突然、性的衝動に襲われる……。寄宿学校を舞台に、言葉ではうまく表わしきれない思春期の少年たちの、心理と意識の揺れを描く。「知性はどうやってサディズムに転じるのか。耽美主義はどうやってテロに転じるのか。無意識の大陸を発見した“第二のコロンブス”ムージルが、クールに描いたボーイズラブの古典」(訳者)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
25
矢鱈、無限に対して考えてしまう特有の堅苦しい思考、おどおどする相手に対する暴力的とも言える感情、性に対して嫌悪感を抱きながらも気になってしまう潔癖さと自己の変化に対する戸惑い、言葉に決してできない揺らめく感情。確かに感情を全て言葉で表現することはできないし、その感情すらも強烈でありながら刹那的でしかない。開かれた世界の縮図である閉じた学校生活での優越感とどんなことでもはみ出すことへの恐れ、深刻なのにぼんやりとした事柄への混乱の描写が見事でした。今の学生やかつて学生だった人達の感想も気になります。2012/08/12
coco.
17
ロベルト・ムージル自身の実体験を含む処女作。上流階級の子息が通う寄宿学校に入学した“テルレス”が、同級生“バイネベルク”、上級生“ライディング”と共に、美少年“バジーニ”を監視矯正(という名を騙った虐め)していく話。性知識には、疎くなるような環境下で育ち、神学や哲学などで、思索面においては、著しく発達した少年が語れば、何故か神聖に感じるのだが、読み手にとっては、少々遠回しで厄介だった。規則に縛られた環境で多感な時期を過ごせば、鬱憤も愛情も屈折するだろうが、彼等の暴力行為は、紛れもなき、魂を傷つける犯罪だ。2015/06/03
春ドーナツ
13
はじめに既視感ありき。もやもやを晴らすべく、奥付で見当をつけて読書帳面をパラパラする。7年前に読んでいた。すっかり忘れていた。忘れていたけれども、混乱しているテルレス君が寝ころびながら空と対峙している場面は今も心に突き刺さっていることに、ちょっと感動した。再読してみて思うのは、夏目漱石氏の後期の作品を読んでいるかのような肌触りがあったことだ。2017/05/10
しゅん
13
ムージルの処女作が寄宿学校BLものだとは知らなかったが、そこはさすがにムージル。少年だけの閉鎖空間の官能性も描かれるが、自分は自分の主人ではなく無意識の奴隷であるというフロイト的視点から内側の獣に襲われたじろぐ思春期の姿に焦点を当てている。性交渉やいじめの口実にカントやインド哲学を持ち出して観念的な言葉で語るめんどくさい中学生たちにはちょっと笑ってしまうが、虚数に注目することで人間の実像をあぶり出すというテーマは重要だろう。最もわからなかった小説の一つ『特性のない男』に、そろそろ再チャレンジしてみるか。2017/02/24
Ayah Book
12
寄宿学校を舞台に、美少年たちの性への目覚め、サディズム、哲学的思索等が描かれる。すぐにモー様を思い浮かべてしまうけれど、微妙に違う雰囲気。作者の自伝的作品らしく、登場人物のモデルが実名まで判明していて、どこまでが実体験?と少しヒヤヒヤした。結構陰惨で性的虐待を含んだ卑劣ないじめでした。。。名作「風と木の詩」も、案外リアルなのか。哲学的なモノローグ部分は、あんまり理解できなかった。2019/09/09