内容説明
ごく普通のありきたりな家庭。夫がいて娘がいて、いたって平凡な日常――のはずだった。しかし、ある暑い夏の日、まだ幼い姪が自宅で何者かに殺害され庭に埋められてしまう。この殺人事件をきっかけに、次々に明らかになっていく家族の崩壊、衝撃の事実。殺害動機は家族全員に存在していた。真犯人はいったい誰なのか? 連城ミステリーの最高傑作がここに。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんたろー
179
久しぶりの連城さんは、評価が高いのを知っていながら何故か読まなかった本作…読み進める内に「そうかぁ、この手の話だから無意識に避けていたのか」と合点がいく…なぜなら苦手にするイヤミス的で、子供が犠牲者になって二組の家族が愛憎にまみれる話だから。とは言え、多くはない登場人物が交互に独白しながら事件の真相に近づいてゆく展開は巧みだし、著者らしい心情&情景描写は健在で苦もなく読めた。ラブ&ミステリとしては上級で何度も引っ繰り返される真相も面白いが『戻り川心中』や『恋文』のような独特の流麗さはなかったのが少し残念。2021/01/05
🐾Yoko Omoto🐾
114
「傑作」などと煽られるとどうしても「戻り川心中」と比べてしまい、正直かなり物足りなさが残った。一人の少女が殺害されたことをきっかけに本音を見せない仮面の家族が崩壊していく様が描かれる。誰が誰にどのような本音を抱いていたのかを明かしながらの展開は読み応えがあるのだが、役者が揃いすぎたとでも言おうか「普通の人」が全くいないことに息苦しさを感じる。断片的には共感できる部分もあれど全体を見たときの現実感の乏しさと漠然とした動機にも今一つ理解が及ばず。人間の醜悪さを描いた作品は好みだが誇張しすぎた感が否めない。2014/07/25
JKD
95
姪が殺された事件をきっかけにこれまで均衡を保っていた家族間の関係に歪みが生じ、エゴによる裏切りと報復が渦巻きドロドロになる。犯人は誰?親族全員に動機があるようだが、それぞれが持つ邪心と嘘のせいでいったい何が真実で誰が犯人なのか予測不能で混乱してくる。それぞれの思惑が語られるたびに不気味さが増し鳥肌が立つ。「所詮、家族は他人の集まりに過ぎない。家族であっても同じ価値観を共有することは難しい」という解説の一文がこの作品を象徴しているように思いました。2020/06/03
machi☺︎︎゛
90
4歳の女の子が誰かに殺害されたのに、家族や姉家族は悲しむより自己防衛ばかりで、そこが気になって話に入り込めなかった。結局、犯人も動機もえっ?って感じで終わって最後まで読むのが苦痛だった。 2018/12/11
アッシュ姉
82
四年ぶり再読。読メ開始以前に読んだので、最初の感想は星表記★★★のみ。結末は忘却の彼方でしたが、連城さんで星三つはおかしいと読み返してみました。なるほど。語り手が変わるごとに景色が違って見え、真相に辿り着くまで幾度も翻弄される連城劇場で、実に見事なミステリですが、いかんせん読後感がよろしくない。まだ四歳の幼女が殺され、殺害動機は家族全員に存在していただなんて悲しすぎる。まさかあの人物まで狂気と闇を抱えていたなんて、とどめを刺されました。殺されたのが大人だったら、ここまで後味も悪くなく評価も違っただろう。2016/03/07