内容説明
明治神宮外苑近くの林で発見された男の死体。黒縁のメガネをかけ、鼻下に細いひげをたくわえた男の人相は、一見重役ふう。白いワイシャツにきちんとネクタイを締めてはいたが、なぜか下半身はパンツ一枚であった。郷原部長刑事をはじめとする四谷署の刑事課の面々は捜査を進めるが、被害者を中心とした男女の人間関係が判明するばかり。容疑者には事欠かないのに、肝腎の決め手に欠けるのだ。郷原部長の迷推理の行方は? ユーモラスな雰囲気のうちに、鮮やかな推理と悲喜交々の人間模様を巧みに描く逸品。シリーズ第二弾。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
涼
10
http://naym1.cocolog-nifty.com/tetsuya/2018/10/post-5f85-1.html2018/10/12
harukawani
9
いやぁ、いいなぁ。林の中で発見される、ネクタイ姿なのに下半身はパンツ1枚の男の死体を発端にした事件は、複雑な男女関係がどんどん明らかになるだけで、一向に解決への糸口を見出せないまま、郷原部長なイライラだけが募っていく。そして唐突に明らかになる喜劇的悲劇的な真相。シリーズ2作目で確立される郷原部長の役割の特殊性も良い。解説でも言及される「バナナ」のエピソードも素晴らしい。本格ミステリーとしての良さ、登場人物たちの生き生きとした描き方だけでなく、作者の哀愁と暖かみが交じる眼差しと美学をも感じさせる名作。2017/02/05
LIAN
7
前作も“ひげ”がキーポイントだったが、今作も“ひげ”の影が垣間見られる。社会描写は時代を感じるしトリッキーでもないが、人物が個性的で面白い(ん〜ひとりひとりが人間くさく、リアル(Θ_Θ)。2010/09/30
惠
7
なんか好きなんだよなぁ、このシリーズ。今回はほんと哀しかったけど、哀しすぎにならない塩梅がいい。2010/09/01
はんげつ
3
結城昌治の短篇がぶっ刺さってきたので以前イマイチだった長篇に再挑戦してみたのですが、うーん、やはり好みの本格ではないですね……。被害者の下半身がパンツ一丁だったという謎の答えも引っ張った割にはだし、事件に決着がついた後の後出しジャンケンのような感想戦も惜しい(手がかりが後出しというわけではない)。ただ、喜劇と悲劇の間を行くような事件の構図、これはよかった。被害者と加害者が揃って✕✕だったから殺し殺されたのだというユーモラスでアイロニカルなまとめ方が読後感をよくしていました。2019/08/21