内容説明
昭和史は逆説の連続である。希望はいつの間にか絶望へと変わる。夢と思えたものが悪夢に転ずる。平和を求めたはずが戦争になり、民主主義の先にファシズムが生まれる。一筋縄では進まない歴史の奔流のなかで、国民は何を望み、政治家はどのような判断を下していったのか? 田中義一、浜口雄幸、広田弘毅、近衛文麿など、昭和史の主人公たちの視点に立って、「かくも現代に似た時代」の実相を鮮やかに描き出す。
目次
第1章 山東出兵は、国際協調が目的だった
第2章 軍の暴走は協調外交と政党政治が抑えていた
第3章 松岡洋右は国際連盟脱退に反対していた
第4章 国民は“昭和デモクラシー”の発展に賭けた
第5章 戦争を支持したのは労働者、農民、女性だった
第6章 アメリカとの戦争は避けることができた
第7章 降伏は原爆投下やソ連参戦の前に決まっていた
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ロッキーのパパ
13
昭和戦前期の主要な政治家について、史料を元にした新たなイメージを提示している。確かに、田中義一や広田弘毅、東条英機などはこれまでと違った面を見せてもらった。その点では興味深い一冊だった。ただ、これらの人物の一面だけに焦点をあてただけで、通説をひっくり返すところまでは行っていない。ただ、著者の視点は気になるので、他の本も目を通してみようと思う。2012/07/12
父帰る
3
昭和史の主人公に語らせる「サスペンスとスリル」に充ちた歴史物語。物語と言っても「」で引用している箇所は全て原典に依っている。登場人物は田中義一、浜口雄幸、松岡洋右、広田弘毅、近衛文麿、東条英機、鈴木貫太郎、以上7名。その中でも、近衛文麿の遊覧飛行ぶりはつとに有名だが、特に、東条英機の開戦責任工作は見事。外交交渉の失敗は東郷に負わし、主に戦うのは海軍だから、開戦の責任を海軍に負わせればいいと。著者は、開戦の切っ掛けはハル・ノートの内容ではなかったと。外交交渉の時間がなかった事に帰すると主張。2015/08/30
たぬき
2
じゃぁ なんで どうなったのよ2012/06/26
choku_tn
1
1926年から1945年における7つの転換点をキーパーソンの視点(意図と判断)から考察したもの。 いわゆる「軍部の暴走」といった紋切り型のフレーズではなく党利党略や民意を背景とした極端な政党の争い、階層間の思惑、内閣の構造と国家意思決定システムの不備、権力者同士の足の引っ張り合いといった複眼的な視点から日本の進路が定まった過程を描き出している。煽り調に陥らず分かりやすくダイナミックに書かれており面白い。上記のファクターは現代の政治と共通する要素(問題点)も含んでおりそういう文脈でも示唆に富んだ内容。
afro
1
井上史観。各々の政治家が最善を尽くそうとして、泥沼に嵌っていく。それもそのはず、ギリギリの綱渡り。この手詰まり感のなかで、戦争は避けることができたと言われても首を傾げる。2011/09/09