内容説明
土地の名が呼びさます昔の幻影。連作短篇集 たまらん坂、おたかの道・・・武蔵野に実在する不思議な土地の名が初老期の男達に垣間見せる青春の残像。時間と空間の交点に人生を映し出す黒井文学の豊かな収穫。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
クリママ
49
武蔵野の印象的な地名の7ヶ所。「たまらん坂」「おたかの道」「せんげん山」「そうろう泉園」… 実在の場所の情景説明と女性との行き違いなどの物語を絡めたの7編の短編集。やっぱり元の名は「多摩蘭坂」ではなく「堪らん坂」だったのか、などと、黒井氏が私の住いのある北多摩の同じ市に住んでいらしたことがあり、読み手としてその場所をよく知っていて、かつ思い入れが強いだけに、小説の部分が何か付け足しのように思われてしまう。解説では文学的に絶賛されているのだけれど。2022/06/17
ネムル
15
初老のおじさん、東京郊外のある地、女性との邂逅をめぐる三題噺だろうか。内省的な語りと女性のミステリアスな内面とがほどよくマッチして、郊外奇譚集のような趣。なかなか面白い。と思うも、いずれも女性との思い出に終始する単調さを、面白い文学の規範とて素直に受け止めるのか、一昔前の文学あるあるとて納得すべきか、よくわからない。まあ、面白いんだけどね。2021/07/23
真琴
7
★★★★☆ たまらん坂、おたかの道、せんげん山、そうろう泉園、のびどめ用水、けやき通り、たかはた不動といった実在する場所を舞台に初老の男性と女性との行き違いなどを描いた短編集。表題作「たまらん坂」には、忌野清志郎の『多摩蘭坂』が出てくる。黒井千次は新聞に掲載されているエッセイを読み興味を持った作家です。奥ゆかしく繊細な文章、男女の関係の美しい描写に惹かれました。新刊では手に入りにくい作品も多いですが、他作も読んでみたい。2023/05/04
きりぱい
5
「たまらん坂」にあのバンドが出てきて、そこで初めてタイトルと歌が結び付いた。たまらん坂って本当にあったんだ・・。落武者が逃げながら、堪らん!と登ったという説をイメージしていたのに、現代的な由来ばかり発覚して抵抗したくなる男。「おたかの道」では、昔の女の名前を思い出して感傷に浸っていたのに、鷹狩りの鷹だとあっさり判明して腹立たしくなったり。中年の男たちが武蔵野の方々で何を思うか。ロマンチックとあほらしさの間とでもいうか、ぶざまと言うと可哀そうだけれど、抱いていた幻想を破られる男たちが切なくも少々しょっぱい。2012/12/15
読書熊
4
武蔵野がテーマ2024/04/30




