谷中、花と墓地

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谷中、花と墓地

  • ISBN:9784622073918
  • NDC分類:914.6

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内容説明

「どの国においても、墓地は美しい。東京の墓地も例に漏れない。しかし、私の見た限りでは、ほかの国では見られない特色がいくつかある。第一は、花の季節になると町中でもっとも賑やかな場所となることである。まるで盛り場。死者と生者が交流して花を楽しんでいるといった感じである。日本人ではないから、これは神道の影響であるといった差し出がましいことは言えないのであるが、なにかそういう関連があるような気がする。アメリカの開拓時代にも、亡くなった者を裏庭に埋葬する習慣があった。幾分似ているような気がする。とにかく桜の花の満開の時は、賑やかな谷中墓地は独り歩きに理想的な場所であった。…………町を散歩するとき、昔から金のたっぷりある界隈よりあまり裕福でない所の方が好きである。谷中の墓地の中でもっとも惨めな墓は、高橋お伝のものであろう。墓地の端っこの公衆便所のそばで今にも滑ってなくなりそうな感じである。私はここが大好きで、側に立ってお伝の顔を想像して、ご苦労さまと言いたくなる」東京は湯島に住みなして、三社祭の見世物化を憂い、四季の桜・藤・朝顔を愛でながら、浮世を眺め暮らす。古今の日本文化を味得したアメリカ生まれの文人による極上の随筆34篇。

目次

春の渡り鳥
藤三題
夏の下町
薪能
「都市」の川を楽しむ
谷中、花と墓地
朝顔の夏
独立記念日の戦争
山の手と下町
下町取材綺譚〔ほか〕

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

timeturner

7
下町を愛した日英翻訳家によるエッセイ集。著者名を見ずに読んだら教養高い日本人老作家の随筆と思ってしまう内容と文章だ。1986~2006年に書かれたものなので懐かしい風景にも出会える。暖かくなったら花の名所を歩いてみようかという気になった。2021/01/31

あられ

3
先日根津に行った 街の風情が面白かった 書架でこの本を見つけて手が伸びた なんとまあとんでもない方だったのですね 川端康成も谷崎潤一郎も読んだというほど読んでいないので恥ずかしい限り 異国の文化や風情を感じることのできる人がどこにも表れる奇跡を思った 頑固で歯に衣着せぬ物言いはなかなかだが、根底に日本を思う気持ちを感じた 良い読書をした そんな感想を持った2021/12/01

さ ぼ

2
上野のれん会の発行する雑誌「うえの」に連載されたものだそうで、それゆえか親しみを覚える文章。「サイデンさん」と東京を散歩している気分になりました。2013/04/16

tsu55

0
源氏物語や川端文学の翻訳で知らるエドワード・G・サイデンステッカーの随筆集。 サイデンステッカーの日本語の著書の多くは、いったん英語で書いたものを翻訳者が日本語に訳したもだが、この本に納められている随筆は、はじめから日本語で書かれたものだそうだ。 書名は『谷中、花と墓地』となっているが、著者の筆は、日本での住まいがあった湯島から始まり、池之端、谷中、山谷、源氏物語、小津映画、永井荷風川端康成と、広がっていく。 「日本的な感性」を愛したサイデンステッカーの、関心のありかが見えてきて興味深い。

メルセ・ひすい

0
『源氏物語』 私見 が凄い! ・・・寂聴  『源氏物語』は何度目を通しても気がつかなかったことが始終出てくる、ということを言いたい。面白い説もあるが、ナンセンスな説も少なくない。しかし、とめどなく新説が生まれてくる。そういう作品である。・・・一番は人物描写の魅力・・・ 対カフカ論 相当の書を処分したが・・・・ 最期 まで捨てられない書。                       2008/09/01

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