内容説明
実際、この頁を埋めることさえ僕にとっては大仕事である。毎月毎月、締切りの一週間も十日も前から、寝ても覚めても一本のエッセイのことを考えて苦悩を味わい、それでどうにかこうにか書き上げては乗り切っている。そんなふうだから別の仕事にまで手がまわらない。(本文より) 小説家であるゆえの喜び、悲哀、そして葛藤。淡々と過ぎゆく日常を描く名随筆。
目次
1 セカンド・ダウン
葉書
2 佐世保で考えたこと
ドラマチック
3 自作の周辺
そこの角で別れましょう
4 象を洗う
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ちゅんさん
47
今の日本人作家でおそらく一番好きな作家。エッセイは小説ほどクセは強くないが時々垣間見える偏屈さには少し嬉しくなる。“じわじわとはじまる”が特によかった。こんなことあるのかな、あるかも知れないな。あったらいいな私にも。2021/09/13
奏市
16
懐かしさが込み上げてくる主に90年代に書かれたエッセイ。当時の著者の年齢見ながら自分はその頃何してたかとか書かれている場所のその頃の様子を思い出したりしながら読んだ。あとがきに書いてあるが、表紙と各章の扉にある写真は装丁家がそれを撮る為わざわざ東京から佐世保に行き撮ったものだと。また著者がいるのにあえて連絡しなかったことも含めその仕事ぶりを著者が好ましく思っていると。著者の小説で出てきて初めて知ったスクラブルとの本人の出会い、暫く嵌まったことも知れて良かった。それを売っているホテルってちょっと洒落てる。2024/10/12
こすも
14
小説における「語り」の名手ですから、エッセイが面白くないわけない。佐藤正午さんは小説以外にエッセイも11冊ほど出されていて、『象を洗う』は3冊目のエッセイです。全体としては小説の主人公・津田真一のような飄々としたユーモアのトーンでまとめられていますが、時おり正午さんの「言葉」に対するこだわりとセンスが光ります。小説を読むことが好きで、小説を書くことに真摯に向き合う姿勢がにじみ出ているところも好印象でした。2017/12/31
momo
11
1991年「すばる」で発表されたセカンド・ダウンから約十年の間に発表されたエッセイと三編の短編小説が収められています。「象を洗う」という題名が、作家としてのあるべき姿を表現しているということで、興味深い内容です。特に心に残ったのは「金魚の運」というエッセイです。佐藤正午さんが幸運、不運をどう考えているのか、不運の連鎖を断ち切るためにするべきことが人生相談の回答のように書かれていて面白く思いました。さらに一生をまるごと左右するような運についても言及されていて正午さんの文学のテーマの一つのようにも感じました。2017/08/31
チワ
8
硬派なようでいて軟派なエッセイであった。中堅小説家の苦労が見えてきて面白い。もっとささいな日常について知りたいところである。2019/09/13




