内容説明
博陵郡王の屋敷で怪異が頻発する。桃の木のたたりと断じて呪法をほどこそうとする道士の騙りを見破り、眠りから醒めなくなった娘を救うのは、式神を操る青年・光周明。はたして彼の正体は?(表題作)他に、孤独な少年帝に忠誠をつくす虎、竜王の甕が見せる夢幻、墨に命を賭けた名匠の皮肉な運命を描いた、心ゆさぶる幻想的な珠玉の四篇を収録。中国傑作短篇小説集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
るすみら
4
桃夭記、嘯風録、迷宮譚、墨匠伝と4編の短編が収録されている。 墨匠伝以外は美しい空気の漂う中国幻想譚。 個人的には墨匠伝がとても良かった。墨を作る墨匠が出てくる物語なんて初めてで、興味深かった。話の出来も良いものだと思う。
紫鈴
3
4つの短編集。どの話も良いですが、特に前半の2つの話が好きです。術を使う飄々とした陶周明、荒々しく熱い、虎の班状元が、爽やかな風のようです。迷宮譚は壺に引き込まれてなんだか眠くなるし、墨匠伝は師弟どっちもどっち。墨の作り方の勉強にもなりました。☆42007/05/17
Yasuko Netsu
3
どれもよかった。表題作の「桃夭記」、時間の流れがいいしそこここに聊斎志異的な魑魅魍魎がカラッと隠れている。締めの「桃夭」が胸を熱くした。「嘯風録」はどこか「山月記」を思わせる。一転「迷宮譚」は、外国文学のようなくらくらするような酩酊感。坂田靖子の「孔雀の庭」を思い出す。表題作とともに私のベストは「墨匠伝」。芸術的な価値を高め、宝飾品のような扱いをされる墨を本来の用としてしっかり見据えることの難しさ。そして、一つ一つを打っていて気付いたタイトルの最後全て「話」だったんだ。2013/07/29
たけはる
2
文章にキレがあるというか、とても読みやすいです。でも伝奇・志怪小説の妖しくも美しい香りはたっぷりと含んでいて、「こういうのが読みたかった!」と膝を叩きたくなりました。どの話が一番面白かったかな、とも考えたのですが、それぞれに味わいがあってどうにも決め難い。いずれにしても、好きだなあ、こういうの。2013/01/27
まる
2
ほぼ十年ぶりに触れる作家さん。墨匠伝が好き。2010/12/21