内容説明
三カ月後に隕石がぶつかって地球が滅亡し、抽選で選ばれた人だけが脱出ロケットに乗れると決まったとき、人はヤケになって暴行や殺人に走るだろうか。それともモモちゃんのように「死ぬことは、生まれたときから決まってたじゃないか」と諦観できるだろうか。今「昔話」が生まれるとしたら、をテーマに直木賞作家が描く衝撃の本格小説集!!
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
438
7つの短篇から構成される。そのいずれもの前に昔話が提示されている。タイトル「むかしのはなし」の由来はそこにあるのだが、伝承文學はしをんさんの父君の三浦佑之氏の専門領域だ。もっとも、「入江は緑」と「浦島太郎」のように一目瞭然のものもあれば、「ラブレス」の「かぐや姫」のように、考え込んでしまうようなものもある。また、もう一つの共通項は、一人称語りのスタイルをとっていること。おそらく、これも、昔話から導かれたものだろう。また、隕石が地球に衝突しそうだという近未来SFの要素も持っている。ただし、これは⇒2025/05/31
HIRO1970
385
⭐️⭐️⭐️本年138冊目。しをんさんは10冊目でした。読み始めは伊坂幸太郎のような展開かなと思いましたが上手く裏切られ、どう読んでも昔話ではなく、むしろ星新一SF的な展開の短編集でナンノコッチャと思いながら読み進めると、むかしばなし=現代のつくり話=しをんさん流のフィクション話の図式が徐々に見えてきました。これは今までの作品とはまた全く違った実験的で軽くパロディ臭のするSFの話です。新たな切り口でオリジナリティー溢れる作品を描き出す著者の才能の底知れなさに羨望と畏敬の念を覚えました。皆さんはどうかな?2015/12/01
Atsushi
278
昔話をモチーフにした独立した「短編集」と勝手に思い込んで読み進んだ。いつのまにか、「三か月後、地球に隕石が衝突する」という話になり、最終話へ。読了後やっと気づいた。題名「むかしのはなし」の意味を。人類が滅亡に向かう中、ラストでのモモちゃんの「死ぬことは、生まれたときから決まってたじゃないか。いまさらだよな」とは恐れ入った。著者の技法に嵌められた一冊。でも面白かったなあ~。2017/06/03
pino
249
いい意味で裏切られた。6人は、犯罪がらみやら、叶わぬ恋やら、愛に縛られている話を誰かに語る。ちっとも、めでたしめでたしではない。「昔話」は残酷だ。どこぞの性悪ばーさんやら、オメデタイじーさんが、騙し、騙され。見返りに娘をとられたり。人間は懲りずに愛憎を繰り返してきた。だから『むかしのはなし』がザラザラしていても不思議ではないし、むしろ楽しい。でも、不安だ。戻し忘れたレコードの針が溝のない空白を、何度も滑る様に、ザラザラした愛が永遠に続くかと思うと。不治の薬も玉手箱も手元にないので、終わらせる手段もない。2013/07/02
にいにい
246
二か月ぶりの三浦しをんさん。7篇の連作短編。読んでいる途中から各話の関連が分かってきて、面白かった。モモのキャラが大好きだ。人は様々な物事を言葉によって把握する。どんな時も、誰もが、言葉をもとに繋がっていたいと思っているのかな。語られることによって、繋げられた物語達。「日本昔話」も過去の誰かの生き様だ。こも本は、今、いや未来の語り継がれる物語。結論は出ない。隕石が来たのか来なかったのか。でも、その前の様々な生き方が心に残る。語り口が興味深い楽しい一冊。2014/05/27