内容説明
古今東西の絵画・芸術作品を、円熟した晩年の著者が偏愛的ともいうべき独自の世界観で読者をいざなう空想ギャラリー。世紀末の妖しい光のもと、華々しく活躍した作家と画家たちの共演「世紀末画廊」、日本と西洋の特異な芸術をイメージ世界に映した「イマジナリア」など、幻想芸術をテーマに書かれた珠玉のエッセイをまとめた文庫オリジナル・アンソロジー。
目次
世紀末画廊(ジャン・ロランとジェイムズ・アンソール;ユイスマンスとフェリシアン・ロップス ほか)
イマジナリア(アロイス・ツェトル―動物たちの楽園;さざえ堂―二重螺旋のモニュメント ほか)
血と薔薇(ポール・デルヴォー;クロヴィス・トルイユ―ネクロフィリアの画家 ほか)
シュルレアリスム、狂熱の追求(私のシュルレアリスム;シュルレアリスムと屍体解剖 ほか)
空想絵画館(江戸の動物画;空想の詩画集 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
(C17H26O4)
49
「芸術に毒は必要である」と考える著者は理由として「人間性には暗黒面があるから」であり「芸術が人間を映し出す鏡だとすれば、当然、そこには人間の暗黒面も映っていなければならない」からだとする。幻想芸術がテーマのエッセイ集だが、人間の暗黒面を感じさせる絵画も多く紹介されていた。前半部は澁澤セレクトの絵画が写真つきで解説してあった。画像検索してみたがヒットしない絵画も多かった。それでも画家の作風や色彩が分かり面白かった。特に興味深かったのはロートレックの「娼家の洗濯屋」とギュスターヴ・モローの「旅する天使」。2018/08/12
双海(ふたみ)
21
古今東西の絵画・芸術作品を、円熟した晩年の澁澤が”偏愛的”ともいうべき独自の世界観で読者をいざなう空想ギャラリー。学生時代に嵌った澁澤だけれど、改めて全集も欲しくなってきた・・・(笑)2016/07/17
なる
8
この一冊で幻想芸術、シュルレアリスムの体系が圧倒的な知識量で語られている。澁澤龍彦の宇宙を覗き見るような。前半は一つないし二つの絵画を題材にした持論が展開されるが、圧巻なのは後半。空想絵画館の章になるともはや独壇場でBeauty. 2020/03/18
りょう@りんご売り
7
澁澤龍彦の唯一の欠点は、読んでいると好奇心がそそられるせいでどんどん脇道にそれていってしまいついついお金と時間を費やしすぎてしまうことだと思う。 まあ、それはいいとして、1つ面白かった部分を引用。「ユングの言うことには螺旋や渦巻きというのは人間の生命が一度死んで再生するために降りて行かねばならない『母たち』の国への入り口である。」どうでもいいけど、筋肉少女帯のレティクル座妄想のジャケットの意味がこれでようやく私にも分かったのでした。2018/04/20
hgstrm2
4
酒井抱一を評した言葉が非常に印象に残る。カイヨワの幻想美術論もボッシュを認めないなどあまりにも厳格ながらも、言ってることにはすごく納得。幻想と奇想は別物。私が好きなのは幻想。不思議なものとか曖昧なものではなく、画家本人にも自覚されない、現実世界に生じた亀裂、それによる不安、戦慄。そういうことではないか。2017/08/20