内容説明
一本の電話をうけたとたんショック状態に陥る人が、青年のまわりに続出しはじめた。わけを聞いても、みんな「なんでもない」の一点ばり。いったいどんな電話なのか? 好奇心をかきたてられた青年に、ついにその電話が。そして……。(「なんでもない」) 表題作「ごたごた気流」ほか、皮肉でユーモラスな短編11編を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
121
平和な日常にそっと潜む小さな乱流12編。『なんでもない』『追求する男』は歯止めの効かない好奇心の果てに虚無感が充満するオチという著者のストーリーの原動力が純化された話。『見物の人』と表題作もこの発展型と言え、前者は画面越しの仮想体験や監視を鋭く予見しており、後者の「相手が弱いとわかると、とたんに勢いづく」という指摘との照応も今日的。更に『重なった情景』ではプライバシーが晒される不眠社会ならではの話。『門のある家』は現実逃避願望の極致。甲斐性なしの青年たちは三十路で会社を潰して途方に暮れた著者の青写真かも。2022/12/27
しゅわ
60
【図書館】平和な日常に潜む小さな乱流の種をユーモラスに描き、考えれば考えるほど妄想が広がる短編12編を収録。冒頭の「なんでもない」は特にお気に入り。ます。独特の雰囲気が余韻を残す「門のある家」も良いですね♪ 「条件」や「追及する男」の皮肉っぷりも健在です。個人的には「まわれ右」がおもしろい展開なのに、星さんならもっとキレイに落とせたのでは?と少し残念。自分ならどうオチをつくるか?あれこれ考えてしまいます。2015/02/05
しゅわ
52
本棚の並び順通り星さん再読祭り!を進行中。手に取って読み始めたら???つい最近、読んだ覚えがある!?慌てて読メを確認したら、半年前に講談社文庫の方を読んでいました。両方持っていたんですね…ん十年気づきませんでした(汗)ダブっているのに気づいても、するする読めちゃうぐらい面白かったので、せっかくなので感想登録。ちなみに手元の角川文庫版は、片山さんの挿絵ではなく和田誠さんでした。そんなバージョンもあったんだ!と二度驚きでした。2015/09/17
活字の旅遊人
49
十二の短編で構成される一冊。人間の繋がりが連綿と、という印象の作品がまとまって登場したような印象。そう書くとなんだか同じパターンの話ばかりな気がしてきたが、決して飽きることなく最後の表題作まで読み続けられた。というか仕事の合間に一気読みだ。『なんでもない』『命の恩人』『追求する男』『品種改良』『門のある家』がその中でも心に残った。『まわれ右』は時間の遡り方が面白く、これは別格。宇宙ものが『追跡』だけなので、その点は少し寂しい。巻末のインタビューは日本の戦後SFについての貴重なお話で、これも面白かった。2022/05/30
KAZOO
47
もう40年以上も前に発表されたショートショートというよりも少し長い短篇が12編入っています。ふりかえって読んでみると結構このなかに書いてある未来的な出来事はそのうちに実現される可能性のものがある気がしてきます。先を見る目がやはりすごいと感じます。2014/11/27