内容説明
「信長に仕えるくらいなら、浪人したほうがましや」。美濃にその人ありと知られた武将・日根野弘就(ひねのひろなり)は「信長を討つ」という決意のもと、新たな主を求め東国に向かった。が、苦労して仕官した今川家での待遇は、美濃の五千貫文に対してわずか百貫文。弘就の波乱と忍耐の人生が始まった。〈『浪々を選びて候』改題〉(講談社文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ウィズ
17
信長、秀吉、家康と同じ時代を生き抜いた男の話です。十代や二十代の頃は三人の天下人に憧れましたが、この話の主人公の苦労がよくわかる年になってしまいました。2015/05/24
Yukihiro Nishino
3
美濃の国奉行の日根野弘就の生涯を描いた作品。信長に反発し各地で抵抗するが、義兄に諭され大嫌いだった信長の家臣となる。その後秀吉に仕えるが、そこでも秀吉に反発し浪人する。何度も浪人するがそのたびに誰かに拾われている。生き方が下手なのか、それとも案外器用だったのか、不思議な人物である。2015/07/24
マサ
2
戦国の激動の中を生き抜いた武将、日根野弘就の物語。武将としてのプライドと一家を養っていく義務感の間で揺れる心情や行動が興味深かった。負けても負けてもしぶとく生きていく姿は他の戦国武将の物語ではあまり見たことがない。秀吉に対して筋を通す物言いにはしびれた。2022/02/07
うたまる
2
「おのれを格別、と思うておると、見えるものも見えやせん。聞こえるものも聞こえやせん。みなと同じこともできんのや。それでは世間が狭くなるだけや。そうやろ」……流転し続けた美濃の武将、日根野弘就の一代記。戦国の世に己を貫く生き様を示し、見苦しさの無い飄々とした格好良さを感じていた。そしたら、捕縛時に義兄からの手痛い説諭の言葉。すなわち、お前の意地は意固地でもある、と。運に恵まれないから流転しているようで、実は馴染めず、交わらず、我を張っていただけなのかもしれない。むーん、何かやけに胸が痛いなあ。2015/01/03
まさ影
2
主人公に向かって金森五郎八が「わぬし、おのれを格別の者と思うておるやろ」と言う場面にシビれた2014/02/22