内容説明
天正三年(1575)初夏、三河の長篠城は、武田勝頼の軍勢1万7000に包囲され、落城寸前。城を守る奥平信昌の兵は500あまり。窮状を伝えるため鳥居強右衛門(すねえもん)は武田の包囲網を破り、織田・徳川の陣地にたどり着き、4万の大軍が救援に向かっていることを聞かされる。だが、その帰途、強右衛門は武田方に捕らわれ、援軍は来ないと告げるよう強いられるが……。表題作「炎の武士」ほか、男たちの劇的な生を描いた傑作三編を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
78
面白かったです。4人の男を描いた群像劇とでも言うべきでしょうか。それぞれが何処か癖があり、劇的な人生を歩んでいる。平易な文章と的確な時代背景が物語を盛り上げているように思います。ただ、何となく同じような展開を見せているような気もしなくはないですが。2017/07/27
優希
44
4人の男たちの生き様を描いています。それぞれの生涯が劇的でした。ただ、何となく同じような展開を見せているとも感じますが。2023/04/06
future4227
30
忠義の人、鳥居強右衛門、測量オタクの間宮林蔵、キャラが濃すぎな新撰組の土方歳三と原田佐之助の四人の生涯を描いた短編集。池波氏ならではの平易な文章と丁寧な背景説明のおかげで大変読みやすい。短編にも拘らず、各人の生い立ちやエピソードが盛り込まれ、かつ事実描写よりも会話を多くすることで、登場人物の人柄が伝わりやすくなっている。これだけの内容を短い枚数にピシッと収めてしまうのはさすがだなぁ。2016/09/24
シュラフ
13
その時 あなたならどうする と問いかけるテーマである。武田勝頼軍に包囲された長篠城は落城寸前。織田・徳川軍への救援依頼のため城を抜け出した強右衛門は救援依頼に成功するも、その帰途に武田軍に捕まる。城方に援軍は来ないと伝えれば命は助けられるともちかけられるが・・・自己の命を守るか、自己の命を犠牲にしても仲間を守るか、強右衛門は自己を犠牲にした。当時の価値観で言えば、裏切りは必ずしも悪ではない。ましてや自己の命がかかっている場合は尚更であろう。それでも強右衛門は自己を犠牲にした。自分ならどうしただろう・・・2014/07/04
タツ フカガワ
11
武田勝頼軍1万7千の兵に囲まれた長篠城で、決死の覚悟で単身徳川方へ援軍を請う役を志願した男の心情に涙した表題作。勤王派の勢いが増すなか、新選組の土方歳三は町家の寡婦と色事と割り切って関係を持つ。やがて京を離れる歳三だが、そのときの心情が切ない「色(いろ)」など粒選りの4編を収録。池波さん、やっぱり稀代のページターナーと再認識しました。2018/01/16