内容説明
高二の暑い夏休みのある日、以前つき合っていた宮沢由実果が、千葉の御宿の海に身を投げたとの知らせを受けた広田悦至。事件当日に悦至は、渋谷にいた彼女からの呼び出しを断っていた。渋谷にいたはずの彼女が、なぜ御宿の海に?だれもが自殺と納得している由実果の事件を、幼なじみとともに調べ始める悦至。由実果の遺留品の中に、封を切っていない下着があったことを知り、彼らは事件が殺人だったと確信する。次第に明らかになる事件の全貌と由実果の姿に、困惑する二人・・・・・・。切なくも爽やかな夏の日々の描写が秀逸な、青春ミステリの傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
セウテス
83
高校生の広田悦至は、元恋人の宮沢由実果の自殺に疑問を持ち、幼なじみの友崎涼子と共に真相を探る。毎回書いているが、樋口氏の作風は読んでいて爽やか気持ちが良い。背景などハッキリしないのだが、登場人物は一人一人がイメージしやすいのも特徴だろう。高校生にしてはハードボイルドが過ぎる様に感じるが、気の強い女子高生との掛け合いの様な会話はけっこう楽しい。ただ私ならこのタイプの女性たちに囲まれていたら、パニックを起こして仕舞うだろう。謎解きも二段三段構えになっていて、予測になるのだが真相にたどり着いた満足感は大きい。2020/10/05
nemuro
18
たぶん、10数年ぶりの再読。すべての既読本の中で私が一番大好きな本、『彼女はたぶん魔法を使う』(樋口有介/創元推理文庫)とシチュエーションも似た感じ。これぞ樋口有介といった風で、実に良かった。(かなり強引ではあるが)これも、勝手に思い付きで始めてみた「自宅本棚の本のタイトルによる“しりとり読書”」のおかげ、と言えなくもない。で、“しりとり読書”は、『燻(くすぶ)り』から来て次は『父・藤沢周平との暮し』を選んでみた。2019/06/14
キー
13
1996年の樋口有介作品。 樋口氏のデビュー作『ぼくと、ぼくらの夏』と同様、男子高校生が夏休みの間に女子高校生の死の謎を解く、という物語。 ただ、『ぼくと、ぼくらの夏』と比べて、だいぶハードボイルド風味。新宿に近い『梅園銀座商店街』を舞台に、クールな主人公と主人公を取り巻く個性的な人々を配置。私立探偵が男子高校生に置き換えられたハードボイルド小説、という雰囲気です。 内容紹介にある「青春ミステリ」という言葉からイメージする甘酸っぱさより、だいぶ苦めの味わいでしたが、自分にはその苦さが快い読み心地でした。2019/11/26
koo
9
これまた樋口有介らしい青春小説でした。主人公悦至が以前付き合っていた由実果が自殺、彼女の幼馴染の涼子と真相を追うのがメインストーリー。悦至はさながら柚木草平の青年版で、大人びた達観したシニカルなキャラクターがよく、ヒロインだけじゃなく家族、友人との会話、軽口が作者の他作品よりもテンポよくリズミカルで心地よい感じでした。事件の真相は既読感のあるパターンではありますが正直ワンパターンでも読者が望んだであろう期待通りの作者らしい青春ミステリでした。2025/04/30
ふぃえ
6
樋口さんお得意の、青春ミステリ。やけに冷静な高校生の主人公と、それぞれ一癖も二癖もある周辺人物たち。この、癖、が曲者で、ついつい引き込まれてしまうんだよな。2022/12/05




