内容説明
物語、フィクション、虚構……様々な名で、我々の文明に存在する「何か」。先史時代の洞窟から、王朝、戦国をへて現代のTVスタジオまで、時空を超えて現れるその「魔物」を希求し続ける作者の短篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
たぬ
33
☆4 筒井氏35冊目は12編収録のヴァーチャル短篇集。「桃太郎輪廻」「馬は土曜に蒼ざめる」「団欒の危機」がお気に入り。現実と虚構をここまでナチュラルに融合させるのはすごいね。明るいエログロも筒井御大のお家芸だしぶふっと吹き出してしまうような箇所もあちこちにあり(例:「空想の起源と進化」におけるギャートルズ)今回も愉快なひとときでした。2021/09/18
北風
33
全体的に悪のり度は低いけど、やはり面白いですねー。マイベストは「馬は土曜に蒼ざめる」と「廃塾令」です。人間の脳を競走馬に移植するって発想は何を食べたら思い付くんでしょうね…。筒井さんはお笑いでいう「天丼」をとにかく駆使して、不覚にも笑わされてしまいます。2016/02/01
saga
29
「既に所有している本に収録されている作品を集めたものは買わない」ことを著者の本を購入する時に一番気を付けていたのに、どういうわけか本書を購入してしまった。12の短編のうち、最近再読したものが3作品、これから再読するであろうものが6作品を占めた。角川文庫では本書のように初期の作品から集めた短編集を、独自の仕分けで再構築して刊行しており、読者の裾野が広がる切っ掛けになることを一愛読者として願うことにしよう。2016/12/17
すしな
17
138−21.一見ナンセンスのようにも見えますが、自分では思いもよらない部分まで考え尽くされている内容の短編集でした。何か問題があるともっともらしい解説でその事件の本質をわかったような気持ちになりますが、実際はテレビやメディアでは報道できない部分ってかなりの割合であるのでしょうし、そういう触れにくい部分もあっけらかんと描かれている壮大な思考実験みたいな本でした。2021/11/24
chacha子
16
筒井お得意の“虚構”に焦点を当てた短編集。頁を繰るうち、虚構は“こちら”へ侵食し、現実は下層・虚構へと沈みこむ。虚構という文字列の合間からこちらを見上げてくる確かな意志を持った眼差しの底知れなさ、これがメタフィクションの愉しみなのか。小説という虚構、テレビという虚構、現実という虚構。すべては筒井という虚構のうちで弄ばれている。2016/04/12




