内容説明
ヨーロッパ、インド、中国、中東の文明圏の彼方で、生き抜いてきた遊牧民たちの領域が中央アジアである。絹と黄金を運んだ悠久の交易路シルクロード。多くの民族と文化の邂逅と衝突。アレクサンドロス大王とチンギス・ハーンの侵攻……。仏教・ゾロアスター教・マニ教・ネストリウス派そしてイスラムもこの地を経由した。中央アジアの雄大な歴史をコンパクトにまとめた入門書。(講談社学術文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
A.T
23
トルクメニスタン、ウズベキスタン、カザフスタン、アフガニスタン、キルギス、新疆ウイグル自治区、モンゴル… などなど。砂漠と山陵とオアシスの、シルクロードと呼ばれる広大な地域の、興亡の歴史が紀元前から20世紀までずーーーっと続いている。島国で安定的な日本とは土地も自然も、歴史も全て違いすぎ、厳しすぎて、その中で延々と部族の規律を守る暮らしを続けてきた人々の粘りつよさが想像される。紀元前4世紀ギリシャからアレクサンドロス大王が、13世紀モンゴルからチンギス・ハーン、(続く)2023/05/28
N島
20
近年脚光を浴びつつある中央アジアについて、歴史、宗教、民族、文化等、人類の営みの変遷を総合的に綴った一冊。絶対的な資料の少なさから、語られる中央アジアの姿に偏りがあるものの、この本から得られた情報は、僕の知識の空白を埋める大切なピースとなりました。中央アジアに興味を持たれた方にオススメしたい良書です。2015/02/19
ああああ
18
ティムール朝や中央アジア関係の本をちょこちょこ読んだ後の再読。読み飛ばしてしまうような少しの記述にも、たくさんのバックグラウンドがあるもんなんだなあ~と思うと同時に、まったくの素人ながらにこの本の記述はとても誠実だと感じた。人類の文明のはじまりから栄えつつも、人種、宗教、言語、文字、川の流れや砂漠の位置までもがうつりゆく中央アジア地域。通史を書くのって超難しいんだろうなあ。2015/11/06
かんがく
16
「中央アジア」という日本人には馴染みの薄い地域を扱っているが、以前ティムールについての本と、近代アフガニスタンについての本を読んでいたので理解しやすかった。伝統的に遊牧民族が住み、アレキサンドロス、歴代中国王朝、ムスリムのアラブ人たち、モンゴル帝国、英露両国、そしてソ連と常に外圧を受けている地域であることがわかる。古い本であるが、巨視的な書き方でとても魅力的だった。2019/10/11
いくら丼
12
著者は遊牧民族や東西交渉を専門とする方。あまりにも広汎に、多くの文化や勢力、地域、民族が関わる中央アジアという地ですが、素人にも優しく丁寧かつ魅力的! 中国史だけでは「辺境」のようだった遊牧民が、メインに扱われることで一気に生き生き。しかし……近代以降ロシアやイギリスが関わってくると、やや唐突感が……読み手の知識不足と言われればそれまでですが、いきなりイギリス領インドが出てきて、唐突に社会主義勢力が頑張り始め……「有名な」と言われても全く聞き覚えのない単語たちに、最後は大変でした(汗)時代かしら……。2021/09/30