内容説明
越後の国を出て十六年、江戸の町で父の仇敵を探し続ける浪人・堀辰蔵。飢えて疲れきった辰蔵はある日ささいなことで逆上し、見知らぬ煙管師の頸すじに斬りつけてしまう。父と仲良くふたり暮しだった煙管師の娘・お道は、これで天涯孤独の身となった。近隣の人々に見守られ、気丈に生きていくお道と、仇討ち転じて闇の世界の仕掛人となった辰蔵の凄絶な半生。折にふれ、奇妙にもつれ合うお道と辰蔵の運命を、池波正太郎が円熟の筆で描いた名作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
48
天涯孤独の身になったお道と仕掛け人となった辰三の半生が壮絶でした。2人の運命のもつれが円熟された世界で繰り広げられていたように思います。もどかしさもありますが、面白かったです。2023/07/22
Kira
18
図書館本。2年ぶりの再読。やはり面白くて、どんどんページをめくった。江戸の闇の世界に足を踏み入れた男と、その男に父親を殺され孤児となった娘お道。二人の運命は平行線をたどったまま、ラストでもつれ合う。どこまでも強く生きぬくお道には、いつも清々しさを感じる。2024/05/29
さく
17
ふとした事で闇の世界に落ちた辰蔵。孤独の中、周りの人々に支えられたお道。最後に二人が出会い、お光を助ける事ができたのは、何の運命か。本人達は何も知らない。人は高く細い壁の上をぐらぐらと揺れながら、歩いているような気持ちの時がある。良い時悪い時はふとした事で反転する。知らぬ間に、お道の役に立てた辰蔵。これもふとした事。苦しくとも生きること。善悪の差は紙一重。2021/03/31
ぶんぶん
15
【図書館】女の数奇な運命の半生記、池波版・第3弾! これは変わった構成だ、人殺しから派生する被害者と加害者を描いたもの。 実際には交錯するはずの無い、進路が妙に入り組んで、何らかの関連性を持ち続ける物語。 片や「仕掛人」の世界、片や「市井物」の女一代記、これを一つに併せて物語を描く。 池波流の「悪事をしながら善行も施す」精神がここでも行われている。 梅安やその時代の人物が登場するのも楽しい仕掛です。 堀辰蔵とお道のどうにもならない宿命と言う物を、追う物追われる物の鏡合せの様で納得させられる。 2020/09/11
Kira
12
図書館本。再読。面白すぎて一気読み。女の生きざまを描いた物語と、仕掛人となった男の生きる非情な世界が平行して語られる。男の魂が救われるラストがとてもいい。2022/05/13